ある日、未来のトリプルフェイスを拾った。【名探偵コナン】

バチバチバトルの同窓会 ページ31

始まりは、零くんとの些細な会話だった。



「Aってお酒呑まないよな。嫌いなのか？」

「え？ 好きだよ。前まではバーに通ってた。マスターはベスト(B)フレンド(F)フォーエバー(F)」

「つまり僕のせいか……」

「違う！！！！」



責任を感じているらしい零くんを宥めること数十分。ようやく落ち着いた零くんは「それでも遠慮はしないでくれ」と言った。

遠慮なんかしてないけどな。



「お酒呑むより零くんと一緒にいたほうが楽しいからねえ」

「そういうこと言うの禁止」

「はいはい。じゃあ機会があったら呑みに行くよ」



と、こんな会話をしている中に、図ったかのような目的でスマホが鳴った。今思えば見るべきじゃなかった。少なくとも零くんの前では。

何年も使われていない中学のときのクラスライン。メッセージは当時のクラス委員長からで、内容は同窓会をしようというものだった。卒業から丸十年だし、そろそろだとは思っていた。まったく求めてなかったけれど。

零くんがうしろから覗き込むようにして内容を見てしまい、怒涛の勢いで絶対に参加するよう言われた。あたしも機会があったら行くと言った手前断れない。言質をとられてしまったのだ。

仕方なく参加する旨を伝え、詳細を待った。



「松七五三さん久しぶりだね！ 十年ぶりくらいかな？」

「Aちゃんはすぐ就職しちゃったからねー」

「あはははは……」



酒がなみなみと注がれたグラスを揺らしながら愛想笑いをつくる。これだから嫌なんだ同窓会は、誰もあたしの乾いた笑いに気づきやしない。

ああ零くんに会いたい。こんな汚い大人に囲まれるより、きれいな零くんだけに隣にいてほしい。



「俺は今プロジェクト任されてて」

「彼氏に数十万のブランドのバッグ買ってもらって〜」

「もうすぐ結婚する予定」



聞こえてくる話題は自慢話ばかり。聞きたくもないっつの、どうせちょっと見栄張ってんだろ。

あたしが中学のとき仲良くしていた子たちはみんな仕事で遅れてくるらしい。師匠なんか「同窓会？ いってらっしゃ〜い」って言って仕事中にあたしを放り出したのに。あたし一人でどうやってやり過ごせと言うんだ。

再会を喜ぶふりをしつつ、お酒を舐めながら、自慢話は躱し……を繰り返す。すでに疲れた。早く来い悪友ども。

……まだまだ終わりは見えない。

＊→←＊

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す