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「あった、これやこれ。」
「ありがとうございます!」
「返すのはいつでもええから。」
直哉さんから書物を渡されて抱き抱える。
これに私と似た境遇の人のことが事細かに書かれてるはず。早く家に帰って読まなくちゃいけない。
目当てのものも見つかったし、これ以上いるのもなんだかアレだし「そろそろ帰りますね。」って言って立とうとしたら、直哉さんが悲しそうな表情を浮かべた。
「帰るん?」
「長居するのは悪いですし。」
「お昼、一緒に食べへん?もうAちゃんの分用意してるし、本のお礼ってことで。」
「あ……じゃあお言葉に甘えて。」
顔を合わせても馬鹿にされてたし、人から聞く話も悪いのばっかだったから印象は最悪だったのに、こんな表情もするんだって、少しだけ心が絆される。
まぁでもフェロモンで私のことを好きになってるからなんだけど。
以前だったら「用事終わったんならはよ帰れや。」って言ってるだろうし、そもそも書物だってすんなり貸してくれるとも思えないし。
「Aちゃん、悟くんにも婚約迫られてるんやろ?」
「言い方は悪いけどそうですね。」
かなり言い方は悪いけど事実だしなぁ、なんて思いながら苦笑いを浮かべると直哉さんは複雑そうな表情になった。
急にどうしたんだろうって顔を覗き込んだ瞬間、腕を引かれて、目の前が直哉さんの顔と天井だけになって。押し倒されたって気付くのにそう時間はかからなかった。
「俺と悟くんやったらどっちがええん?」
「え?」
「結婚するってなったら、誰のこと選ぶん?」
余裕なさげな顔のまま聞いてくる直哉さんを見て、つい黙ってしまう。
私からすれば恋も結婚もまだ早くて。そもそもフェロモンが暴発しなければこんな状況にもならなかっただろうし、急にこんな選択を迫られて焦ってしまう。
でもここで五条先生を選べばどうなるかなんて分からないほど馬鹿じゃない。殴られるのを想像して、じわっと、冷や汗が滲むのが分かった。
「恋愛とかよく分かってなくて。」
「じゃあ頑張れば結婚の話了承してくれるんやな?」
「たぶん?」
「は?」
「あ、いや!好きになれば!好きになれば了承します!」
急に低い声を出した直哉さんにびっくりしてついそう言ってしまう。と、直哉さんはさっきと同じように微笑んで、私を起き上がらせた。
こんな状況になるなら禪院家に来なきゃ良かった、なんて本音を隠しながら、作り笑いを浮かべた。
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ゆう - 続き早くみたい!! (3月19日 14時) (レス) @page39 id: f37b355590 (このIDを非表示/違反報告)
パンピー - 一気に読みました!!すごく面白くて好きです!もう更新はしてもらえないのでしょうか,,,?続き,楽しみにしてます! (2月18日 23時) (レス) id: 2630b906e6 (このIDを非表示/違反報告)
あ - 面白すぎて、一気読みしました!もう続きはないのでしょうか……? (10月26日 19時) (レス) @page39 id: ba86f2a0b9 (このIDを非表示/違反報告)
久遠(プロフ) - めっちゃ面白いです!! これってもう終わりなんですか、、? (2022年7月19日 22時) (レス) @page34 id: d025dfcb18 (このIDを非表示/違反報告)
みか(プロフ) - お父さんまだ娘はやらん的な、親バカだといいな。と脳内お花畑が通ります。すっごく面白いです!一日で全部読んじゃいました!。更新待ってます (2022年1月11日 18時) (レス) @page31 id: 7db18ffeeb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もも | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/Momo_UxxU_
作成日時:2021年3月21日 17時