10: 最悪の目覚 ページ22
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爽やかな鳥の鳴き声と木々の揺れ。
そんな最高の目覚めとも言えるような状態で目が覚めて辺りを見渡す。
自分の物じゃない柔らかいけどアルコールの匂いが染み付いたベッドを見て高専内にある看護室だと気づいた。
何で私こんなところに……
1つ、また1つと、時間をかけてゆっくりと昨日あった出来事を思い出して急いで部屋を飛び出る。
特級呪霊は宿儺が殺した。でもその後は?
私のフェロモンに充てられた宿儺の影響で私が眠った後、虎杖くんと伏黒くんはどうなったのか、妙にざわつく心に手を当てながら走る。
「硝子さん!」
薄暗い廊下の中、1つだけ電気が付けられた部屋のドアを勢い良く開いて硝子さんの名前を呼ぶ。が、そこに硝子さんの姿はなく鉄製の椅子に座った五条先生と横に立っている伊地知さんがいた。
そしてその前には布で覆われた誰かの死体。
すぐに私の元へ駆け寄ってきた五条先生の手によってその死体を見れないように目を塞がれる。
でも一度見てしまった物はなかなか頭から離れなくて。むしろ記憶の中にこびりついてしまって、うまく息ができない。そんな私を落ち着けるために五条先生は私を廊下に連れ出してドアを閉めた。
「ふ、しぐろくん……ですか……?」
「いや、悠仁だよ。」
五条先生の言葉に「え、」と驚きの声が漏れる。
宿儺が伏黒くんと戦って伏黒くんが死んでしまったならまだ想像はできる。でも実際に死んでしまったのは虎杖くんの方で頭がますます混乱していく。
「宿儺が心臓を取り出して、それを治す前に悠仁に身体が移り変わった。心臓を取り出されてもなお被害を生まないために悠仁は死を選んだんだ。」
「伏黒くんと野薔薇ちゃんは知ってるんですか?」
「勿論知ってるよ。」
呪術師の家系として生まれたせいで小さな頃から人の死に耐性はあった。
兄みたいに呪霊から呪術師としての才能を奪われてしまった人間だって知ってるし、呪術師を続ける以上人の死と関わらないといけないのも分かってる。
それでも、虎杖くんが死んだことが受け入れられない。
もしもあの時私が眠らずに宿儺に頼み込んで虎杖くんと身体を変わってもらえればこんなことにならなかったんじゃないかって、そう思って胸が痛み始める。
なんて最悪な目覚めなんだ。
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作者名:もも | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/Momo_UxxU_
作成日時:2021年2月2日 19時