嘘だと言って 下 ページ26
ピッ ピッ
機械音だけが、白い部屋の中で響く。
目の前には、多量の機械をつけた彼女。目を閉じて、静かに眠っている。
幸い命に別状はなかったようで、時が経てば目を覚ますらしい。ただ、いつ覚ますかわからないという。すぐ覚ますかもしれないし、10年かかるかもしれない。
白い彼女の顔に、手を当てる。青白くクマがひどい彼女の顔。おそらく、相当無理していたのだろう。
「...詩乃。」
名前を呼ぶ。もちろん、目を覚まさない。
「詩乃。起きて、くださいよ...。」
小さく捻り出した声が掠れる。目の奥が熱くなる。なんであの時、出て行く彼女を止められなかったんだろう。突っ立ったままだったんだろう。
悔しい。苦しい。
そんな思いが頬を伝い、
彼女に落ちた。
「げん..たろ...?」
「...!
詩乃っ!」
病院というのにも関わらず大きな声を出す。
目の前の彼女は、うっすらと目を開き、弱々しく微笑んだ。
「ごめん、なさい。...あの、ネックレス、私の、だったんですね。...轢かれる、前に、乱数さんに、電話で聞いて」
「いいから、喋らなくていいですから...!」
ポツリポツリと言葉を紡ぐ彼女を覆い被さるように抱きしめる。まだ流れる涙を止まらず。喋るのを邪魔する。
「私...申し訳ないことしたな、って思って。気をとられていたら、赤信号なのに気づかなくて...。」
だんだん声が小さくなり、代わりに嗚咽が聞こえ始める。
そう、今回の件は全て誤解なのだ。
最近仕事でトラブルがあり、その解決で帰宅が遅くなったり。
たまたま担当の子が新たにハマりだした消臭剤が小生の服に付いたり。
彼女に買ったネックレスだったり。
偶然は重なるものなのだろう。
それがこんな結果を残してしまったということだ。
「ごめんっ、なさい...!本当にっ...!」
「いいですから...!」
小生たちは看護師が入ってくるまで、
年甲斐もなく抱き合って
涙を流し続けていた。
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桜月花(プロフ) - 紺さん» たくさん送ってくださって本当にありがたいです!そこまで言っていただけると私もとても励みになります!ご愛読ありがとうございました! (2019年5月9日 22時) (レス) id: 8714acda80 (このIDを非表示/違反報告)
紺 - 沢山送ってすみません!凄く素敵な作品でした!もちろん右のお星様押させて頂きました! (2019年5月3日 3時) (レス) id: de02aba2c8 (このIDを非表示/違反報告)
紺 - 幻太郎…惚れたわ結婚しよう() (2019年5月3日 3時) (レス) id: de02aba2c8 (このIDを非表示/違反報告)
紺 - 間違えて二個送ってますた。← (2019年5月3日 3時) (レス) id: de02aba2c8 (このIDを非表示/違反報告)
紺 - 家でげんたろ〜とか、だいす〜とか叫んでたら親に怒られました。全く、どうしてくれるんですか←すみません、悪いのは私です。 (2019年5月3日 3時) (レス) id: de02aba2c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜月花 | 作成日時:2019年2月8日 16時