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8話 〜brothers side〜 ページ9

玄関のしまる音。そして沈黙が走る。

「…行っちゃったね〜!!」

 その沈黙を破ったのは十四松だった。

「ったく、あの人は何で急にあんなことしだすかね…」

 と言いつつトド松はずびぃ、と鼻をかんだ。

「本当、何なの……」

 はぁーとため息をついたチョロ松。

「…ケッ、クソ松の癖に…」

 えぐ、としゃくりあげながら話す一松。


 …僕らはずっと分かってた。あれはカラ松兄さんだって。

 いや、当たり前だ。あれで気づかないバカはいないだろう。

 そもそも、おそ松兄さんはもういないんだから。……死んでしまったのだから。

「…でもさ、なんか安心したよね」

 チョロ松が呟いた。…頬が緩んでいる。

「うん…カラ松兄さんって分かってたけどね〜」

「すっげぇリラックスしたッス!」

「……まぁ、うん」


 皆頬が緩んでた。それはもう、だらしないほどに。

 一瞬でも、おそ松兄さんが戻ってきたんだと錯覚した。

 安心した。すごく。


「不思議だねぇ〜。何でなんだろ?」

「ふしぎふしぎ!!」

 きゃっきゃと遊び出す末の二人。

「…何でだろうね」

 ぽつん、と呟いたチョロ松に、一松が皮肉を込めて笑う。

「ケッ、あれで騙せたと思ってんのかクソ松…」


 ふ、と自然な笑みが浮かんだ。

 ここで皆、おそ松兄さんが居なくなってからはじめて笑った。

「はははっ!バカみたい!」

 一番に笑いを漏らしたのはチョロ松だった。

「ふふふ、ねぇ〜、なにがしたいんだか!」

「ねー!!ははははっ!!」

「ヒヒッ……おもしろ」

 …今考えたら何が可笑しかったんだろ、という爆笑。

 でも…その何でもない時間がすっごく幸せで。

 本当にいつか、おそ松兄さんが帰ってきてくれる気がした。

 だったら、皆で笑って待っていたい、と思った。

 おそ松兄さんが、見てくれている気がした。

 だから、笑顔でいよう、そう思えた。

 【ニセモノ】のおそ松兄さんだったけど、あの一瞬は【ホンモノ】のように感じたんだから、それでいいじゃないか。

 その日はバカみたいに笑って、ぐっすりと眠った気がする。

 そして事故以来初めて、誰一人として夜中に目を覚まさず、ぐっすりと眠った。

 立ち直れた訳じゃないけど、頑張ろうって、思えるようになった。

「お茶でもいれようか」

 チョロ松の一言で、二人の兄がいない居間で僕らはお茶を飲みはじめた。

 そのお茶はいつもよりも温かくて、心にじんわりと染みた。

9話 〜Your side〜→←7話 〜カラ松side〜



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設定タグ:おそ松さん , カラ松 , 夢小説   
作品ジャンル:恋愛
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シバ(プロフ) - 紫乃原―シノハラ―さん» ほぉ!!!ありがとうございます!!!早速見てきます♪ (2018年1月30日 0時) (レス) id: 1c78cabc1b (このIDを非表示/違反報告)
紫乃原―シノハラ―(プロフ) - シバさん» シバさん!お待たせしました!先程公開してきましたので、是非ご覧ください!よろしくお願いします。 (2018年1月29日 21時) (レス) id: 8760750b24 (このIDを非表示/違反報告)
紫乃原―シノハラ―(プロフ) - シバさん» コメントありがとうございます!続編はただいま執筆中で、公開できる状態ではないんです……ごめんなさい(;_;) もうすぐ公開しますのでお楽しみに! (2018年1月29日 21時) (レス) id: 8760750b24 (このIDを非表示/違反報告)
シバ(プロフ) - 紫乃原―シノハラ―さん» この続編、パスワードですよね…どうすれば良いのでしょうか? (2018年1月29日 20時) (レス) id: 1c78cabc1b (このIDを非表示/違反報告)
紫乃原―シノハラ―(プロフ) - 来夢*゚さん» 来夢さん、はじめまして!なんて素敵なお言葉……光栄です。本っ当に嬉しいです。ありがとうございます(T-T) これからも更新頑張りますので是非これからもよろしくお願いします! (2018年1月10日 21時) (レス) id: 8760750b24 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紫乃原―シノハラ― | 作成日時:2017年1月7日 8時

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