45話 〜カラ松side〜 ページ46
ベランダから部屋に戻ると、リビングの入り口に、白いコンビニ袋を提げたAが立っていた。
「へぇ、タバコ? いいご身分ね」
『あ、いや……』
「私が馬鹿だったよ、待たなきゃよかった」
『待つ……って』
「…………そう、へぇ、そっか」
……やばい。
本能的にそれを感じた。が、もう遅かった。
「あなた変わったね。 “昔”は急いで追いかけてきてくれたのにね。 もう私の事なんかどうでもいいんだね」
『違、』
「違くないよね、来てくれないんだもん。 うちでタバコ吸ってられるほどだもんね」
『ごめ__』
「もういいから、私寝る」
立ち上がって側に駆け寄るが、寄るなと手で制される。
こちらを見てすらくれない冷たい瞳が、却って心に突き刺さった。
……だったらいっそ、詰ってくれたら、俺を責めてくれたら。
がちゃん!と荒々しくリビングの戸を閉められて、Aの立っていた辺りにビニール袋が置き去りにされていることに気がついた。
中身を確認して、また俺は絶句した。
『これ……』
缶ビール2本と、つまみと、小さなケーキが2つ。
Aは、これをどんな気持ちで買ったんだろう。
Aは、この寒い中、どこで、どんな気持ちで俺を待っていたんだろう。
何も知らなかった。何も気づけなかった。
俺は、なんてことを、
『今更だ……』
何を言おうと、もう。
起こったことは、過ぎた時間は、言った言葉は、もう戻らない。
Aがどれだけ明日を楽しみに頑張っていたかなど、すっかり考えていなかった。
ただ全てを知られてしまうのが怖くて、俺はそれを拒んだ。
『馬鹿だ』
__ほんと、ばっかだなぁーお前。
『最低だ』
__さいてーさいてー。ろくでなしだよ。
『おそ松、』
__なに?
「オレ、ほんとに、どうしたらいいんだ?」
黒い妄想の中の兄は、その質問には答えてくれなかった。
ただすべてを見透かすみたいに微笑んで、それからはもう一切口を開こうとしなかった。
妄想、なのに、な。
よろよろと立ち上がって、コンビニ袋を手に取った。
ビールと、ケーキは冷蔵庫へ、そしてつまみは棚へとしまった。
もう一服しようと思い、キッチンの換気扇を回す。ごーっと音が
ぷは、と吐いた煙はすぐさま換気扇に吸い込まれた。
おーおー、そんな吸うとガンになるぞ、と、声が聞こえたような気がした。
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シバ(プロフ) - 紫乃原―シノハラ―さん» ほぉ!!!ありがとうございます!!!早速見てきます♪ (2018年1月30日 0時) (レス) id: 1c78cabc1b (このIDを非表示/違反報告)
紫乃原―シノハラ―(プロフ) - シバさん» シバさん!お待たせしました!先程公開してきましたので、是非ご覧ください!よろしくお願いします。 (2018年1月29日 21時) (レス) id: 8760750b24 (このIDを非表示/違反報告)
紫乃原―シノハラ―(プロフ) - シバさん» コメントありがとうございます!続編はただいま執筆中で、公開できる状態ではないんです……ごめんなさい(;_;) もうすぐ公開しますのでお楽しみに! (2018年1月29日 21時) (レス) id: 8760750b24 (このIDを非表示/違反報告)
シバ(プロフ) - 紫乃原―シノハラ―さん» この続編、パスワードですよね…どうすれば良いのでしょうか? (2018年1月29日 20時) (レス) id: 1c78cabc1b (このIDを非表示/違反報告)
紫乃原―シノハラ―(プロフ) - 来夢*゚さん» 来夢さん、はじめまして!なんて素敵なお言葉……光栄です。本っ当に嬉しいです。ありがとうございます(T-T) これからも更新頑張りますので是非これからもよろしくお願いします! (2018年1月10日 21時) (レス) id: 8760750b24 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紫乃原―シノハラ― | 作成日時:2017年1月7日 8時