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3話 〜カラ松side〜 ページ4

ぎぃい、と重たい音をたてて開いた冷たい鉄の扉。

 扉の上には「遺体安置室」の文字。

 全員が息を飲んだ。…兄貴は…もう

 十四松が泣いている。トド松も泣き始めた。

 よく見れば、チョロ松も、一松も泣いていた。

 オレは……オレはなぜか泣けなかった。

 悲しくない訳でない。でも、涙が出なかった。


『お前は変わらなくていいよカラ松。』

 そう言ってくれた時の笑顔がじりじりと脳裏を焦がし始める。

 悲しい。苦しい、辛い、悔しい…

 いろんな感情が込み上げたが、それは涙にならなかった。

 嫌な汗をかいて、泣いている兄弟を見ることしか…出来なかった。

 …見なければいけないだろう。

 安置室の真ん中、横たわる人。

 体にかけられた布切れを、そっとめくった。

 …ひどくボロボロだった。

 服装は、いつもの物だったが、一つだけ違う点があった。

 左手の薬指。そこにまばゆく光る指輪がはめられていた。

 ………嘘だろ、兄貴。

 愛するあの彼女と、オレたちを置いていくのか…!?

 目を閉じたおそ松。動かない。目を覚まさない。

 オレが布をめくったため、皆がおそ松の顔を覗き混んだ。

 そしてまた泣いていた。…指輪を見て、初めて実感が湧いた。


 兄貴は、おそ松はもういないんだ、と。


 泣いちゃいけない、と思った。

 brother達の前で情けなく泣いてはいけない、と。

 そしてもう一人、おそ松の隣で泣いている。

 オレ達がここに到着するずっと前からそこにいる女性。


 おそ松のDestinyであるA……さん

 おそ松の半同棲中の彼女だ。…つまり、愛する人。


「おそ松ッ!!」

 彼女はおそ松に向かって叫んだ。

「ねぇ…!プロポーズするならちゃんとしてよ!!何で置いて

 っちゃうの!?ねぇ!!」

 彼女の手には小さな箱が握られていた。…赤い血飛沫の飛んだ、

 白い箱。――指輪の箱だろう

 …彼女にそんな顔をさせてはダメなんだぞ、おそ松…っ

 辛かった。brotherと、彼女が悲しむ顔を見るのが。

 涙が出なかった。悲しみも、辛さもここにあるのに。

 なぁ、お前のためにこんなにたくさんの人間が泣いてるんだ。

 もう一度笑ってくれよ、brotherの為に、彼女のために…

『俺さぁ〜、プロポーズしたいんだよね〜』

 お前、そう言ってたろ。

 ここで、初めて一粒涙が落ちた。

 そしてオレは心に決めた。

 オレがbrother達を、彼女を必ず笑顔にするんだ、と。

4話 〜Your side〜→←2話 〜カラ松 side〜



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設定タグ:おそ松さん , カラ松 , 夢小説   
作品ジャンル:恋愛
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シバ(プロフ) - 紫乃原―シノハラ―さん» ほぉ!!!ありがとうございます!!!早速見てきます♪ (2018年1月30日 0時) (レス) id: 1c78cabc1b (このIDを非表示/違反報告)
紫乃原―シノハラ―(プロフ) - シバさん» シバさん!お待たせしました!先程公開してきましたので、是非ご覧ください!よろしくお願いします。 (2018年1月29日 21時) (レス) id: 8760750b24 (このIDを非表示/違反報告)
紫乃原―シノハラ―(プロフ) - シバさん» コメントありがとうございます!続編はただいま執筆中で、公開できる状態ではないんです……ごめんなさい(;_;) もうすぐ公開しますのでお楽しみに! (2018年1月29日 21時) (レス) id: 8760750b24 (このIDを非表示/違反報告)
シバ(プロフ) - 紫乃原―シノハラ―さん» この続編、パスワードですよね…どうすれば良いのでしょうか? (2018年1月29日 20時) (レス) id: 1c78cabc1b (このIDを非表示/違反報告)
紫乃原―シノハラ―(プロフ) - 来夢*゚さん» 来夢さん、はじめまして!なんて素敵なお言葉……光栄です。本っ当に嬉しいです。ありがとうございます(T-T) これからも更新頑張りますので是非これからもよろしくお願いします! (2018年1月10日 21時) (レス) id: 8760750b24 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紫乃原―シノハラ― | 作成日時:2017年1月7日 8時

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