29話 〜カラ松side〜 ページ30
「……なぁトド松、一体俺達は何処へ……」
「いーから、ちょっと黙ってついてきて」
オレの方を一切振り向かず、そう突っぱねられた。
オレは家を飛び出してから、人混みをするりと器用に進んでいくトド松の背中にかじりつくように必死で歩いていった。
平日の昼頃だというのに、人の量が半端ではない。
まるで人々が波のようで、オレは流されていくような心地だった。
前を行く人の踵を踏んづけたり、すれ違い様に肩をぶつけたりと、わたわたしながら歩いていくと、トド松が突然歩みを止めた。
「はいここ。 僕の行きつけのお店ね」
そう言ってトド松は、さっさと店のドアをくぐった。
洒落た雰囲気の洋服店だ。
普段のトド松が好みそうな服がウィンドウにずらりと並べられている。
オレも慌ててトド松の後ろについて店に入った。
「……何故洋服店に来たんだ?トド松」
「……いやぁ、わっかんないかなぁ」
不満げにそう呟いて、深いため息を吐いたトド松は、更に続けた。
「……いや、だからね!? 彼女の事騙さなくても、オシャレな洋服とかで気ぃ逸らせばいいでしょ?」
「嗚呼!なるほど!」
「それに……カラ松兄さんのイッタい革ジャンなんか着ていったら彼女ドン引きだよ!? 少しはマトモなの選ぶから」
……オレのperfect・fashionが彼女を傷つけてしまうのか……?
少し残念だが、センスのいいトド松の事だ。きっとniceな服を選んでくれるのだろう。
あれも違う、これも違うと店の中をうろうろ歩き回るトド松。
オレは何もできずに、ただその背中を追いかけていた。
「……まぁ、とりあえずこれとこれ、あとこれも。 はい、着てきて」
トド松は自らの腕の中に積まれていた洋服から、何着かをオレに手渡した。
「着たら見せて、僕外にいるから」
そういうと試着室のカーテンをしゃっ、と閉じ、沈黙が訪れた。
……着替えるか。
パーカーに重ねて羽織ったオレの相棒、暗黒の翼(革ジャン)を華麗に脱ぎ捨てた。
「……な、なぁトド松」
カーテン越しに、おずおずと問いかける。
「何、着れたの?」
「あ、あぁ、着れたんだが……その、変じゃないか?」
「そんなの見ないと分かんないんだけど、いい?開けるよ」
問答無用でカーテンを開け、オレの姿をじぃ、と見たトド松は、
「流石は僕の見立てた服だわ」と、オレにナイスサインを出し、優しげに微笑んだ。
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シバ(プロフ) - 紫乃原―シノハラ―さん» ほぉ!!!ありがとうございます!!!早速見てきます♪ (2018年1月30日 0時) (レス) id: 1c78cabc1b (このIDを非表示/違反報告)
紫乃原―シノハラ―(プロフ) - シバさん» シバさん!お待たせしました!先程公開してきましたので、是非ご覧ください!よろしくお願いします。 (2018年1月29日 21時) (レス) id: 8760750b24 (このIDを非表示/違反報告)
紫乃原―シノハラ―(プロフ) - シバさん» コメントありがとうございます!続編はただいま執筆中で、公開できる状態ではないんです……ごめんなさい(;_;) もうすぐ公開しますのでお楽しみに! (2018年1月29日 21時) (レス) id: 8760750b24 (このIDを非表示/違反報告)
シバ(プロフ) - 紫乃原―シノハラ―さん» この続編、パスワードですよね…どうすれば良いのでしょうか? (2018年1月29日 20時) (レス) id: 1c78cabc1b (このIDを非表示/違反報告)
紫乃原―シノハラ―(プロフ) - 来夢*゚さん» 来夢さん、はじめまして!なんて素敵なお言葉……光栄です。本っ当に嬉しいです。ありがとうございます(T-T) これからも更新頑張りますので是非これからもよろしくお願いします! (2018年1月10日 21時) (レス) id: 8760750b24 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紫乃原―シノハラ― | 作成日時:2017年1月7日 8時