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『俺ね、萩原研二って言うの。お嬢ちゃんは?』
「……Aちゃ、てゆーの」
『Aちゃんか!名前も可愛いなんて流石Aちゃんだな〜』
今思うと研二くんはとっくに私のことを【Aちゃん】って呼んでたけど、それでもちゃんと自己紹介してくれた。
最初の頃はやっぱりまだ名前では呼べなかった。
男の人は怖いし、研二くんをちゃんと信用しきれていなかったから。
研二くんが優しい人だって気づいたのは、出会ってから1ヶ月くらい経った頃。
私にとことん嫌われていた研二くんは、それでもめげずに隣に居てくれて、保育園で一人ぼっちの私と唯一仲良くしてくれた。
他にも、研二くんはいっぱい私の為に優しくしてくれた。
ママが居ない日はこっそりご飯を作ってくれたり。
寂しくて泣いてる時はギュッて抱きしめてくれたり。
でも、優しいばっかりじゃなくて、私が悪いことをしたらちゃんと叱ってくれて。
気づけば、私はそんな研二くんのことが大好きになっていた。
「けんじくん見て見て見て!ママにね、ランドセルかってもらったの!」
『うんうん、世界一似合ってる!Aちゃんももう小学生だもんなぁ。お兄さん感動で泣きそう……』
「えっ、泣いちゃダメだよ!入学式で泣けなくなっちゃう!」
『大丈夫入学式分はとってるから』
グッジョブと親指を立てた研二くんに、私も負けじと親指を立てた。
そんな研二くんが私にだけ見える存在だって理解したのは、四歳の頃。
ずっと研二くんがみんなに見えているものだとばかり思っていた私は、「変な子」と言われていることにも気づかず、色んな子に彼を紹介した。
だけどいつも返ってくるのは「誰もいないよ?」という言葉ばかり。
最後には「うそつきは泥棒の始まりなんだぞ!」と言われてしまって、私は泣きながら保育園を飛び出した。
『……Aちゃん、ちょっとお話ししよっか』
多分研二くんは、まだ幼い私を気遣って黙っておいてくれたのだと思う。
だって、「俺はみんなには見えていないんだ」なんて、きっと三歳の頃の私は理解できなかったから。
泣きながらブランコに座る私に、研二くんは優しく説明してくれた。
『俺とAちゃんはね、今、不思議な糸で結ばれてるんだ。だからこうやってお話も出来て、こうやって触ることも出来る。他の子には見えないのは、この糸が、俺とAちゃんだけのものだからなんだよ』
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宮野冬姫(プロフ) - 本当ですか!ありがとうございます!! (2022年7月10日 13時) (レス) id: 09433d1ffe (このIDを非表示/違反報告)
無糖(プロフ) - 宮野冬姫さん» 分かりました!変更しても物語には影響がないので、水銀レバーに変えておきます! (2022年7月10日 9時) (レス) id: 24145c4343 (このIDを非表示/違反報告)
宮野冬姫(プロフ) - そうなんですか!でも、松田は水銀レバーと言っていたので個人的はコナン世界に合わせてほしいです。生意気なこと言ってすみません (2022年7月10日 9時) (レス) id: 09433d1ffe (このIDを非表示/違反報告)
無糖(プロフ) - 宮野冬姫さん» コメントありがとうございます!ご指摘に関してですが、現実世界だと水銀レバーではなく水銀スイッチというらしくて、間違いではないです!多分無駄にリアリティーを追求してしまったんでしょうね(笑)ご指摘ありがとうございます! (2022年7月10日 9時) (レス) @page29 id: 24145c4343 (このIDを非表示/違反報告)
宮野冬姫(プロフ) - 028の爆弾のお話、水銀スイッチではなく水銀レバーですよ!! (2022年7月9日 23時) (レス) @page29 id: 09433d1ffe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:無糖 | 作成日時:2021年6月13日 18時