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35話 ページ37

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彼女を目の前で口説かれて、俺は身を焦がす劣情に駆られた。それは自制の効きそうにない強い衝動。

彼女と知り合ってほんの数分だけの男が、俺が気軽に出来ない行為_____指先に触れ、手を握る行為を意図も容易くしているのを見て、一気に湧き上がった妬ましいという感情。


男を加減もなく威圧をかけ、見せつけるように、彼女は俺のものだと豪語する……。
名前を呼ばれ、戸惑い、胸に浮く熱病。

加えて、彼女を強引に引っ張り、困惑し名前を呼び続けるのを無視した。
自分の中に溜まる黒ずんだものを浄化したかった。

少し落ち着いたら、ちゃんと顔を見て頭を下げよう___


生まれて初めて湧き上がる熱の感情を処理しきれない俺に、彼女は追い打ちをかけた。




『____……杏寿郎さん』




あどけなく、たどたどしいその声に、俺の何かがぷっつんと音を立てて、どんどん崩壊していく。


____俺の事を知りたいだの。教えて欲しいだの。

君はどうして俺をそこまで揺さぶる。



俺の問いに答える悲痛な声音と回答に、俺はどんどんおかしくなった。



顔を真っ赤にして、泣きそうな顔の彼女の瞳に浮かぶ「こんなの嘘だ。夢に決まっている」という疑念を消し去りたくて、

欲深に俺は彼女の艶やかな唇に己の唇を重ね合わせた。




誤魔化しようのないこの感情は…………






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「それは、恋です!煉獄さん」






ああ、甘露寺……お前はずちなしに正しい。正しかった。


「ある人を見て、この人かっこいいな、可愛いなって思う自分を意識してドキドキがグオーって来て、バクバクに変わるんです」

痛いくらいに唸る心臓。















一度しかしていない接吻は長かった。

唇を離すと、彼女は傘を落として、短い呼吸を繰り返す。




「A、俺を見てくれ」




最初は弱っていても強い母のような女性だと関心した。

彼女は鬼で、変わった鬼で、いつか殺すと誓った。
だが、俺は彼女に恋慕してしまった。


笑顔、仕草、少年への愛情……


俺を射止めるには十分だった。





彼女を殺せない俺は何者でもない。





わかっている。自分でも。
君がわかっている以上に、わかっている。





だから……そんな目で見ないでくれ。





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おもち - 赤い花白い花の歌詞が入っていてとても惹き込まれましたー!とても素敵です!!! (2020年3月24日 21時) (レス) id: 2fd70573e8 (このIDを非表示/違反報告)
茄子(プロフ) - 小説も挿絵も何もかもがとても素敵でした……素晴らしい作品をありがとうございます…… (2020年1月25日 23時) (レス) id: 58113d68f6 (このIDを非表示/違反報告)
モルス(プロフ) - 涙が止まりません……こんな素晴らしい作品をどうもありがとう…… (2019年12月2日 14時) (レス) id: d7cc26133c (このIDを非表示/違反報告)
愛郎素(プロフ) - 香坂さん» 語彙力が!高い!!よもやよもやです……本当に書いていてよかったと感じました!これからも頑張ります! (2019年10月12日 14時) (レス) id: 56f98660a0 (このIDを非表示/違反報告)
香坂 - 言葉使いや書き方、表現に引き込まれました。一つの本を読み終えた時のような気持ちになり、とても良い作品だと心から思いました。このお話が読めてよかったです。 (2019年9月18日 17時) (レス) id: c6f322a1f4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:愛朗素 | 作成日時:2019年8月30日 21時

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