008 犯人 ページ9
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『常温のアルコールを振れば当然、そうなる』
フォークで自作の料理をつまみながら、Aはそう零した。
我ながらいい出来だとAは思った。
Aの傍らで、ナナリーはチェリーパイを頬張っている。
ふわふわのウサギがパイの甘さに蕩けている様子にAは頬を緩めた。
『ナナリー、ホイップクリームが』
「え?本当ですか?とってください、Aさん」
ああ、可愛い。
ヴィ家でのティーパーティーを思い出す。
『はい、ナナリー』
「ありがとうございます、Aさん」
ところでお兄様は?ナナリーが小首を傾げて、聞いてきた。
ルルーシュはシャンパンで濡れたカレンに服を貸すために、自室に行っている。
シャーリーはそのことに不服そうだが……。
それにしても、近いはずなのに随分時間がかかる。
紅茶の入ったティーカップに口をつけた時だった。
「おいおい!ちょっと、マジかよ!」
リヴァルが携帯を見ながら、大きく叫んだ。
「A、テレビつけて!」
リモコンが一番近かったからだろう。
なんのことだかサッパリわからないが、言われるがままにAはスイッチをおした。
『速報です。エリア11の総督である、ブリタニア皇族、クロヴィス殿下が一一一一一一一』
『何者かによって、殺害されました一一一一一一一』
飛び込んできたアナウンサーの緊迫したような声。
「どういうこと、A!?」シャーリーが叫んだ。
ナナリーの表情には、明らかに同様の色が見て取れた。当然だ、腹違いとは言え、義兄が死んだのだから。
「Aさん、」
皇族に最も近いAさえもそれは知らなかった。
いや、彼女の父親は知っていたのかもしれない。
ただ、唖然とテレビ画面を見つめた。
そこへ、ルルーシュとカレンがやってきた。
「お兄様!大変!」今度はナナリーが叫んだ。
「クロヴィス殿下が亡くなったの」
「殺されたんだってさ」
ルルーシュとカレンが驚きの声を漏らす。
『クロヴィス殿下は薨御された。イレブンとの闘いの中、平和と正義のために殉死されたのだ』
『我々は悲しみをおして、その意思を継がなければならない。』
『たった今、新しい情報が入りました。実行犯と見られる男が拘束されました』
『発表によりますと、逮捕されたのは名誉ブリタニア人です』
映し出されたその姿。
見間違えする筈はない。
A、ルルーシュ、は一瞬呼吸の仕方を忘れた。
枢木スザク、それが容疑者の名前である。
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古城玲於(プロフ) - 今後ともよろしくお願いします!本当にありがとうございます (2019年7月26日 14時) (レス) id: 56f98660a0 (このIDを非表示/違反報告)
古城玲於(プロフ) - はじめまして、復活しました。コメントありがとうございます!これだけでやる気が (2019年7月26日 14時) (レス) id: 56f98660a0 (このIDを非表示/違反報告)
翔。(プロフ) - はじめまして、拝読させていただいてます!とても自分好みのストーリで読み言ってしまいました!!続き待ってます!!!頑張ってください! (2019年6月20日 1時) (レス) id: 7366e8991b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:愛朗素 | 作成日時:2019年3月12日 19時