012 面会時間 ページ13
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『枢木スザク』
「やっほー」
薄暗い拘置所、小さく区切られた牢に枢木スザクが隔離されていた。
名前を呼んだAとおちゃらけた様子のロイド、二人の上司に気づいたスザクは顔をあげた。
童顔には何度も殴られた痕跡があった。それは実に痛々しく、憐れだった。
「エーデルワイス、司令官、ロイドさん……」
その声には気力があまり感じられず、どこか安堵した声にも聞こえた。
『随分殴られたみたいね』
「純血派は新興派閥の中でも過激派だからねぇ。拷問にかけられないで済んだだけでも幸いじゃない?」
『痛過ぎる尋問ね』
「おめでとー。君に頼まれていた二人、死体リストにはなかったよぉ」
用意された椅子にロイドが腰をかけたが、Aは咎めず、壁に背中を預けた。
「でも君の方は不利だなぁ、裁判になっても君の味方はだーれもいない」
「法廷は真実を明らかにするところです」
『明かされないことの方が多いと思うけどね。真実なんてものは』
「それが世界というものなら、自分は未練なんてありません」
真剣な眼差し。
Aはそれ以上、言葉を紡ぐのをやめて、黙ってスザクを見つめた。
牢を後にした二人はしばし無言だったが、誰もいない静かな通路でロイドは話しかけた。
いつも通りの不敵な笑みと口調で。
「よかったのかい?絶対に助ける、なんて洒落た言葉言わなくて」
『あんな眼差しで見られたら、言う気なんて失せるよ』
隣を歩くAの声はワントーン低く、虚無感に満たされている。
『秘密をしまい込んで罰を受けようとしている目』
「そう見えるのかい?」
『彼、死にたいのかな。生きたくないのかな。裁かれたいのかな。罰が欲しいのかな』
立ち止まったAとロイド。
ロイドは珍しく、Aの顔を覗き込まなかった。
「…重いね、君たちは。至って真剣なのに、死の感性が頭をよぎる。消えてしまいたいとふと思う。
それは、昔の君にそっくりだね」
優しい口調、不敵な笑みは消えて微笑を称えているロイドはAの冷たい手を包み込んだ。
空いた片手で頬に手を添える。
「死んでしまったら何も出来ない。死に救いはないよ、A。
思いを伝えればいい。君は《思いを伝えること》が上手だろう?」
『……そうだね、』
Aは悲しげに囁いた。
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あれ……微妙に、ロイド×主人公?
でも、二人の間には妙な愛情や複雑な感情があると言っていいでしょう。勿論セシルさんも。
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古城玲於(プロフ) - 今後ともよろしくお願いします!本当にありがとうございます (2019年7月26日 14時) (レス) id: 56f98660a0 (このIDを非表示/違反報告)
古城玲於(プロフ) - はじめまして、復活しました。コメントありがとうございます!これだけでやる気が (2019年7月26日 14時) (レス) id: 56f98660a0 (このIDを非表示/違反報告)
翔。(プロフ) - はじめまして、拝読させていただいてます!とても自分好みのストーリで読み言ってしまいました!!続き待ってます!!!頑張ってください! (2019年6月20日 1時) (レス) id: 7366e8991b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:愛朗素 | 作成日時:2019年3月12日 19時