25 偶然 ページ26
「…寒い」
まだ11月は始まったばかりのはずなのに、既に12月を感じさせる寒さだ。吐く息が白い。
私の足は商店街へと向かっていた。行ってみると、街灯が明るく商店街を照らして、人も多く賑わっている。時刻は夕方の5時。日は既にほとんど沈んでいて、空は暗い。
それでも行き交う人々は楽しそうで、笑顔を見せていた。
「…懐かしい」
ポツリと口にした言葉は、吐いた白い息と共に消えていく。
去年は、私もこの風景の一部だった…。
「創っ早く〜っ!」
「創ちゃんダッシュだぜ〜っ!」
「わわっ、待ってください友也くんっ光くんっ」
思いふけって歩いていると、私の隣を順々に元気な男の子たちが通り過ぎていく。最後の子は女の子かと思ったが、制服がズボンだったから男だと判断した。
……ん?あの制服…
「もしかして、夢ノ咲学院の子?」
思わず口にしてしまったその言葉を消すには、時間が足りなかった。
最後に私の横を通り過ぎた男の子がこちらを振り返ってきたのだ。
「?はい、そうですよ。何かご用ですか?」
ふんわりと可愛い笑顔を浮かべた彼は、本当に男なのか疑うほどの可愛さだった。
「っ…」
私が黙り込んでしまうと、男の子は首を傾げてこちらを見てくる。
そして、彼を先で待っていた男の子2人もこちらにやって来た。
「創?どうしたんだよ?」
「?このねーちゃん誰?」
「いえ…夢ノ咲の生徒?って聞かれたので、何かご用かと…」
少し戸惑ったが、さっきの言葉は思わず口に出してしまっただけなので、彼らに本当は用などない。
「…ごめんなさい。…知り合いがそちらの学校にいたものですから、思わず目に止まってしまって…」
私がそう言うと、創と呼ばれていた男の子はそうなんですね、と言った。だが、もう1人の…ベージュの髪の毛をした男の子が、私を見て眉をひそめた。
「?…この人、どこかで…」
「!じゃあ、私はこれで失礼します。引き止めてしまい、すみませんでした」
私はそう言って、そそくさとその場を引き上げた。
「ん〜?気のせいかなぁ…」
「友也くん、どうしたんです?」
「あ〜いや、あの女の人、昔夢ノ咲学院に忍び込んだ時に見た誰かに似てると思ったんだけど…気のせいかな」
焦った。あの子が私という存在を知ってるんじゃないかと思った。
…自意識過剰か。きっとそうだ。舞台を降りた過去の人間を、誰かが覚えているはずない。
私は自分にそう言い聞かせ、足を進めた。
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あずまこぐれ - 2年ほど前から愛読させて頂いている者です。この小説は、他の小説とは違う、心に響くものがあるんです。これからの更新は難しいものなのでしょうが、やっぱり見に来てしまいます。届いているかは分かりませんが、これからも度々見に来るので、更新、待ってます。 (2019年5月7日 18時) (レス) id: af7df8004e (このIDを非表示/違反報告)
遊園地依存症 - めっちゃおもしろかったです!レオぴとスバル君の二人すごい好きだったんですごい嬉しいです! (2018年1月29日 0時) (レス) id: f385502180 (このIDを非表示/違反報告)
辻本ロサンゼルス(プロフ) - プリンさん» スバル「ありがとうっ!そう言ってもらえて嬉しいよ〜!これからも応援よろしくね☆」レオ「わははっ!答えを聞く前に妄想してみろ!…な〜んてな!ユニット名は『Clarte』って書いて『クラルテ』って読むぞ☆」 (2017年12月19日 18時) (レス) id: 569f586e7a (このIDを非表示/違反報告)
プリン - とっても面白いです!こんな素晴らしい物語を作るなんて凄いです!尊敬します!!!あの、今更なんですがスバルとレオと夢主がいたユニットはなんて読むんですか?バカですみません!!! (2017年12月18日 22時) (レス) id: e5258e5310 (このIDを非表示/違反報告)
辻本ロサンゼルス(プロフ) - ルルさん» スバル「泣かないで〜!俺は笑顔が好きだからさっ!」レオ「わはは!ロス(作者)、このコメントみて喜んでたぞ〜!これからも応援よろしくな!」 (2017年11月18日 14時) (レス) id: 569f586e7a (このIDを非表示/違反報告)
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