努力02 ページ36
しかし通形は、それには頷かなかった。
「いいや、強い個性にしたんだよね。……発動中は肺が酸素を取り込めない。吸っても透過しているからね」
「！」
「同様に鼓膜は振動を、網膜は光を透過する」
あらゆるものがすり抜ける……それは、予想以上のものだった。何も見えない。何も聞こえない。何も感じない。そんな状態のまま、ただただ落下の感覚だけがある……底知れない、深淵の奈落に落ちていくような。
(………ぞっとする)
使い手にとっては恐怖も伴う個性だろう。そして何より、『扱いづらい』。
(だから、『調整が難しい』って……)
通形が言うには、壁ひとつすり抜けるにしても、まず片足以外発動。次にもう片方の足を解除して接地。最後に残った足を発動させてすり抜ける……と、複雑な工程が発生する。
(それを、多人数相手にあの速さで……)
「急いでいる時ほどミスるな、俺だったら……」
「おまけに何も感じなくなってるんじゃ動けねー……」
上鳴と峰田が呆然と呟く。到底、自分たちにできるような芸当ではなかった。
「そう。案の定俺は遅れた！！ ビリっけつまであっという間に落っこちた。服も落ちた」
(服は余計……いや大事か)
モラル的に。
「この個性で上を行くには遅れだけはとっちゃダメだった！！ 予測！！ 周囲よりも早く！！ 時に欺く！！ 何より『予測』が必要だった！ そしてその予測を可能にするのは経験！ 経験則から予測を立てる！」
「………！」
つまり通形はそのことを手合わせを通して伝えたかったのだ。言葉ではなく、体験をもってして。そしてその狙いは違うことはなかった。
「インターンにおいて我々は『お客』ではなく1人のサイドキック！ プロとして扱われるんだよね！」
びりびりと響く通形の声が、脳に直接攻撃語りかけてくるようだった。
「それはとても恐ろしいよ。時には人の死にも立ち会う……！ けれど恐い思いも辛い思いも全てが学校じゃ手に入らない一線級の『経験』」
(恐い思いも、辛い思いも……)
それは、Aにとって覚えがありすぎる言葉。
(わたしは、やっぱり……！)
後悔するより、強くなりたい。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 553人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
SangriA(プロフ) - あいうえお。さん» お久しぶりでございます！いつの間にか7です……！9月に書き始めたシリーズなのにおかしいな……。これからも更新がんばりますのでよろしくお願いします！ (2018年10月26日 22時) (
レス) id: f00caaebcb (このIDを非表示/違反報告)
あいうえお。 - 久しぶりのコメント、いつのまにかもう7。更新が進む進む。低下する私の語彙力。←←更新頑張ってください！(唐突←← (2018年10月25日 23時) (レス) id: a39bf4407f (このIDを非表示/違反報告)
SangriA(プロフ) - 雪音さん» そう言ってもらえてありがたやですー( ´ ▽ ` )更新がんばりますねー (2018年10月20日 22時) (レス) id: f00caaebcb (このIDを非表示/違反報告)
雪音(プロフ) - SangriAさん» 試験面白い！忙しい中レスありがとうございます！頑張ってください！ (2018年10月18日 23時) (レス) id: d204d91f16 (このIDを非表示/違反報告)
SangriA(プロフ) - 雪音さん» ありがとうございます！まだまだ更新がんばるので楽しんでくれたら嬉しいです！ (2018年10月18日 19時) (レス) id: f00caaebcb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：SangriA | 作成日時：2018年10月17日 21時
