星と幻想【FAIRYTAIL】 (ページ30)

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『お待たせ』

ふわりと漂う甘い香り。
ギルドのキッチンに立つユリカが、カウンターに出来上がった料理を並べる。

目の前に置かれた皿に乗るのはこんがりと良い具合に焼き色がついたアップルパイ。
上に乗せられたホイップクリームはアップルパイの熱でとろりと溶け始めている。

「わぁ、美味しそう！」

「いい香りだな」

「ユリカさん、お料理上手なんですね！」

皆が目の前のアップルパイを見つめながら目を輝かせている。
その様子にくすりと笑うと、ユリカは"召し上がれ"と目の前の3人に食べるよう促した。

「ん〜美味しい！」

「さすがユリカだな。
昔作ってもらったケーキも旨かったが、これも旨い」

『ふふ、ありがと』

「それにしてもどうしていきなりアップルパイを作ろうと思ったんですか？」

「確かに唐突だったわね」

『んー……』

ユリカたちは今日、王様への仕事の報告を終え帰ってきたばかり。
ギルドに着くなり、ミラにキッチンを貸して欲しいと頼むユリカには誰もが首を傾げた。

しかしおかげで美味しいアップルパイを食べられているのだから、理由などはどうでもいいことになりつつあったのだが。

『ステラ王国でね、助けてくれた人がいたんだけど』

思い出すのは何度も助けてくれたあの人。
リンゴを食べるかと聞いてくるその様子を思い出せば、思わず笑ってしまった。

実はこのアップルパイも、別れ際に渡されたリンゴから作ったものなのだ。

『リンゴが大好きな人でね。
別れ際にリンゴをくれたから何か作ろうかな、って』

「へぇ、変わった人もいるのね」

「しかしリンゴ好きなだけあるな。
このリンゴはものすごく旨い」

一口、また一口、と味わって食べるエルザの姿には思わず笑みが溢れる。
ユリカもまた自分の作ったアップルパイを一口頬張ると、その出来の良さに顔を綻ばせた。

「何食ってんだ？」

「旨そうな匂いだな！」

「ナツ、グレイ」

『アップルパイよ。
2人の分もあるけど…食べる？』

今日も妖精の尻尾(フェアリーテイル)は煩いくらいに賑やかだ。
でもそれが当たり前で、そんな空間が一番落ち着く場所でもあった。

『(……また、会えるといいな)』

ギルドの喧騒の中。
手に持ったアップルパイを見つめ、ユリカは口元に笑みを湛えた。