true 06 ページ6
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嗚呼、カッコ悪い。カッコ悪すぎて、嘲笑じみた笑いが零れる。
せっかく、この子はカッコいいと思っててくれたのに。
「そう、ですか……」
乾いた笑いを零す彼女に、胸が罪悪感でぎりぎりと締め上げられる気がした。
今までだったら、告白1つを断るのをこんなに苦しく思ったことなんかないのに。
それはきっと、好きな人に振り向いてもらえない苦しさを。
想いが届かない切なさを。俺も知ってしまったから。
今ではこんなにも、心が痛かった。
「ごめんなさい……困らせるような事言って。」
潤む瞳を、我慢するように零す笑みが痛々しかった。
「でも、言えるだけでも嬉しかったです。」
どこか聞き覚えのある言葉が、耳に痛かった。
「ありがとうございました。」
溢れる申し訳なさに、僅かに拳に力を込めた。
「サッカー頑張って下さいね」
最後に笑って、彼女は走り出した。
(あー……)
勿体な。可愛い子だったのに。きっと、性格も良かった。
ギリギリと締め付けられていた胸が、ほんの少しだけ緩む。
鈍い痛みを残す胸は、俺を静かに責め続けた。
「なんなんだよ。」
全っ然、楽になれねぇ。息苦しくて、溜め息を吐いた。
くしゃりと、前髪をかきあげる。
教えてくれ、と思った。胸から離れないこの気持ちを。
胸に刺さった、この気持ちを。消してしまえる方法が、俺は知りたい。
もう粉々に、散ったはずの欠片が。小さく、小さく。
俺の心に刺さって、離れようとしない。
「(……なんで)」
何でこんなにも、まだ好きなんだよ。
何でこんなにも、アイツだけなんだよ。
可愛い子。優しい子。思いやり深い子。頭が良い子。元気な子。
理想とする子なら山ほどいた。付き合った子の中に、たくさんいた。
けれど満たされることはなかった。それが何故なのか、今なら分かる。
どこかで探していた。自分の隣に立つ子を見て、自分の彼女を通して、
自分の彼女の向こう側に。アイツの、面影を。
ここの場面なら、アイツはこう言うのに。
これをしたら、アイツはこう喜んでくれるのに。
これを言ったら、アイツはこう笑うのに。
これを食べたら、アイツはこう微笑むのに。
自分の言葉に、ただただ可愛い笑顔を向ける子に物足りなさを感じていた。
何も言い返してこない。Yesとしか言わない彼女達に、違和感を感じていた。
可愛い笑顔の向こうに、俺は無意識にあの凛とした表情を見つめていたんだ。
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ショートピース - 最後まで感動してしまいました (12月3日 21時) (レス) @page18 id: 863f8c46c7 (このIDを非表示/違反報告)
Laso - 深い愛情が感じられました。この作品、何回読んでも胸がジーンとします。若武の暖かい優しさに、何度泣きそうになったことか…。感動をありがとうございました! (2019年4月4日 13時) (レス) id: 5cf405873d (このIDを非表示/違反報告)
Kobato*(プロフ) - あけぼの7110さん» 失恋は辛いですよね……どんなに時間をかけてもいいので、小説に書いたように自分の気持ちを大切にされてくださいね。本当に嬉しかったです。意欲を貰いました……ありがとうございました<(_ _)> (2017年7月26日 19時) (レス) id: 1a71bdddc1 (このIDを非表示/違反報告)
Kobato*(プロフ) - あけぼの7110さん» あけぼのさん、届いたコメントを読んで今までにないくらいに本当に嬉しかったです。私の書く小説を通して、誰かに何かを伝えられたら何かその人の心に影響を与えられたら、と思いながら書いているので、そう言っていただけて本当に勇気をもらいました。 (2017年7月26日 19時) (レス) id: 1a71bdddc1 (このIDを非表示/違反報告)
あけぼの7110(プロフ) - すごく泣けました(T ^ T)若武の気持ちに少し共感する自分がいました。私もつい最近失恋してしまったんですけど、若武の十年後の話で私も少しずつでいいから進まなきゃと思いました。 (2017年7月25日 19時) (レス) id: 744a83138f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Kobato* | 作成日時:2017年6月12日 18時