愛することが罪ならば。07 ページ17
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震えている腕。僅かに湿っていく胸に、どうしようもない愛しさが募る。
募って募って、鈍い痛みを放つ心を優しく包んだそれは、俺に彼女の体を抱きしめるように促した。今、泣いてるのに本当に泣かないでいられるのだろうか。
頭の片隅で掠めた言葉は、声にならずに彼女を抱きしめる腕に込めた力に溶けていく。
「…あの女の人は、離れたくなかったんだよ」
うん、知ってるよ。
「きっとあの男の人が一緒に逃げようって。駆け落ちしようって言ったら、
きっと一緒についてきてくれたよ。」
分かってる、きっと笑顔で手を取っていた。
「迷わず、ついていったよ。」
その道が、どんなに辛い道だってことを知っていてもあの女は男と共に歩いていくだろう。
「それなのに、なんで勝手に決めて勝手に置いていっちゃうの?」
揺れる彼女の声が、静かに静かに空気を震わせた。
「なんで…勝手に置いていかれなくちゃいけないの?」
握られた手に、今、彼女は一体どんな感情を込めているんだろう。
「どうして…愛し合ってるのに離れなくちゃいけないの……?」
嗚呼、こんなにも。こんなにも痛いんだ。
剥き出しになって、全ての余計なことを取り払った感情は、こんなにも痛く心に響く。
一つ一つの、感情の矢が。的確に、俺の心に傷をつける。
「ねぇ、黒木くん」
何年もの間。何回も、何回も呼ばれた音。今までに、聞いたことがなかった声で。
こんなにも切なく、強く、苦しげな彼女の声を俺は知らない。
「黒木くんも、私を置いていくの?」
激情とも思える感情が、俺を襲った。
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Kobato*(プロフ) - 凛奈さん» 本当にこっちが感謝です(笑)更新したときには、是非読んでみてください* (2017年7月9日 16時) (レス) id: 1a71bdddc1 (このIDを非表示/違反報告)
Kobato*(プロフ) - 凛奈さん» いやいやいや…!凛奈さんのコメントにどれだけ書く気を貰っているか…!正直に言うと、新しい作品を作ったときや更新したときに凛奈さんがコメントしてくれないかなぁ〜って思うことよくあります(笑)毎回毎回素敵な感想も頂いて…! (2017年7月9日 16時) (レス) id: 1a71bdddc1 (このIDを非表示/違反報告)
Kobato*(プロフ) - ?0704さん» 今、またなんとなく書きたいものが浮かんでいるので更新したときは是非読んでみてくださいね! (2017年7月9日 16時) (レス) id: 1a71bdddc1 (このIDを非表示/違反報告)
Kobato*(プロフ) - ?0704さん» ありがとうございます!この話は私が書く話の中でもすごく深いものといいますか…とりあえず上手く表現したいことが伝わるか不安だったんですが、そういってもらえて本当に嬉しいです!黒木は本当に泣けますよね(´;ω;`) (2017年7月9日 16時) (レス) id: 1a71bdddc1 (このIDを非表示/違反報告)
Kobato*(プロフ) - まみさん» 更新履歴まで見ててくださったんですね…(涙)更新遅くてごめんなさいOrz、こちらこそまた時間がありましたら読んでやって下さいね* (2017年7月9日 16時) (レス) id: 1a71bdddc1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Kobato* | 作成日時:2017年6月11日 19時