流れ星じゅう。 ページ10
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はらり。きらり。1つだけでなく、まるで流れ星のように流れ続ける彼女のそれに、
思わずふっと笑ってしまう。彼女のそれを拭おうとした手。
けれど、ぴたりと止まってしまう手。彼女の唇が、俺の名前を確かに形作る。
胸に広がるただただ苦く、切ない気持ちが俺の手を封じ込めた。
この手は、もう彼女に触れてはいけない。触れられない。
彼女もまた、それを分かっているに違いなかった。
溢れるそれを見つめるしかない俺に、彼女は静かに俺を見つめた。
何かを言おうとしているんだろうか。
震えるばかりで微かにしか動かない唇を、彼女は噛み締める。
「大丈夫、」
びくり。
彼女の体が、はっきりと震えた。
「大丈夫だから。」
ぽろぽろと。
溢れるそれは、止まらない。
「これからもずっと、」
変わることのない、それを。
「俺はアーヤの側にいるよ。」
いつか、彼女が俺にくれた明確な居場所から。
「だって、」
一歩も。はみ出ることなく。
「俺達、心の友だろ?」
これから先もずっと、俺はお前を見守ってるから。
アーヤが結婚しても。アーヤが子供を生んでも。アーヤが歳を取っても。
離れたりしないから。すぐ近くで、彼女の笑顔を見守れるくらい近くにいるから。
だから、怖がらないで。
「安心して。」
俺達の関係は、壊れないよ。
指先を優しく握れば、彼女は初めて小さく笑みを見せた。
心の友の。彼女の友達の。限界の距離。指先だけ。ずるい俺の、必死の抵抗。
俺と、彼女と、星だけしか見ていないこの場所なら。
星は、きっと見逃してくれる。
「ずっと来てたメール、アイツから?」
「うん。」
「以外に嫉妬深いね、アイツも。」
「ふふ。」
「嫌になったら、いつでも俺の胸は空いてるからね?」
「…もう。」
きらり。
彼女の左手の薬指に輝く小さな星。
「ねぇ、アーヤ」
こちらを見上げる彼女に、こみ上げる2文字。
「何?翼」
柔らかな風が吹く。
俺はそっと、蓋をしめた。
もう、これから先、開かないであろうそれを。
「やっぱり、何でもない。」
俺は、静かに殺した。
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K - 誰との結婚式ですか? (2019年8月18日 20時) (レス) id: 70bbe6910f (このIDを非表示/違反報告)
yossy(プロフ) - とても綺麗で切ない作品でした。黒猫での翼の気持ちとこの作品での翼がリンクします。大好きなK'Sシリーズ。これからも楽しみにしています。 (2018年12月29日 3時) (レス) id: ce568f86b1 (このIDを非表示/違反報告)
0 - あと、kobato*さんの作品一覧表を見させていただきましたが、パスワードがけっこう掛けられていたので、少し残念です。もしよかったら、作品を公開していただけないでしょうか?勝手なお願いで申し訳ありません。 (2018年9月30日 20時) (レス) id: e2992bba0e (このIDを非表示/違反報告)
0 - ありがとうございます!もし書けたら、タイトル教えてください! (2018年9月30日 20時) (レス) id: e2992bba0e (このIDを非表示/違反報告)
Kobato*(プロフ) - 0さん» 0さん、コメント本当にありがとうございます。今はなんというか…書きたいものの書ききって小説からは遠ざかっていたので0さんのコメント本当に嬉しかったです…!どれくらい時間がかかるか分かりませんが頑張ります! (2018年9月24日 14時) (レス) id: da506c070e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Kobato* | 作成日時:2017年7月22日 19時