検索窓
今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:27,341 hit

流れ星じゅう。 ページ10




はらり。きらり。1つだけでなく、まるで流れ星のように流れ続ける彼女のそれに、
思わずふっと笑ってしまう。彼女のそれを拭おうとした手。
けれど、ぴたりと止まってしまう手。彼女の唇が、俺の名前を確かに形作る。
胸に広がるただただ苦く、切ない気持ちが俺の手を封じ込めた。

この手は、もう彼女に触れてはいけない。触れられない。
彼女もまた、それを分かっているに違いなかった。

溢れるそれを見つめるしかない俺に、彼女は静かに俺を見つめた。
何かを言おうとしているんだろうか。
震えるばかりで微かにしか動かない唇を、彼女は噛み締める。


「大丈夫、」


びくり。

彼女の体が、はっきりと震えた。


「大丈夫だから。」


ぽろぽろと。

溢れるそれは、止まらない。


「これからもずっと、」


変わることのない、それを。


「俺はアーヤの側にいるよ。」


いつか、彼女が俺にくれた明確な居場所から。


「だって、」


一歩も。はみ出ることなく。


「俺達、心の友だろ?」


これから先もずっと、俺はお前を見守ってるから。

アーヤが結婚しても。アーヤが子供を生んでも。アーヤが歳を取っても。
離れたりしないから。すぐ近くで、彼女の笑顔を見守れるくらい近くにいるから。
だから、怖がらないで。


「安心して。」


俺達の関係は、壊れないよ。

指先を優しく握れば、彼女は初めて小さく笑みを見せた。
心の友の。彼女の友達の。限界の距離。指先だけ。ずるい俺の、必死の抵抗。
俺と、彼女と、星だけしか見ていないこの場所なら。
星は、きっと見逃してくれる。


「ずっと来てたメール、アイツから?」

「うん。」

「以外に嫉妬深いね、アイツも。」

「ふふ。」

「嫌になったら、いつでも俺の胸は空いてるからね?」

「…もう。」


きらり。

彼女の左手の薬指に輝く小さな星。


「ねぇ、アーヤ」


こちらを見上げる彼女に、こみ上げる2文字。


「何?翼」


柔らかな風が吹く。

俺はそっと、蓋をしめた。
もう、これから先、開かないであろうそれを。


「やっぱり、何でもない。」


俺は、静かに殺した。

流星群。→←流れ星ここのつ。



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (61 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
25人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

K - 誰との結婚式ですか? (2019年8月18日 20時) (レス) id: 70bbe6910f (このIDを非表示/違反報告)
yossy(プロフ) - とても綺麗で切ない作品でした。黒猫での翼の気持ちとこの作品での翼がリンクします。大好きなK'Sシリーズ。これからも楽しみにしています。 (2018年12月29日 3時) (レス) id: ce568f86b1 (このIDを非表示/違反報告)
0 - あと、kobato*さんの作品一覧表を見させていただきましたが、パスワードがけっこう掛けられていたので、少し残念です。もしよかったら、作品を公開していただけないでしょうか?勝手なお願いで申し訳ありません。 (2018年9月30日 20時) (レス) id: e2992bba0e (このIDを非表示/違反報告)
0 - ありがとうございます!もし書けたら、タイトル教えてください! (2018年9月30日 20時) (レス) id: e2992bba0e (このIDを非表示/違反報告)
Kobato*(プロフ) - 0さん» 0さん、コメント本当にありがとうございます。今はなんというか…書きたいものの書ききって小説からは遠ざかっていたので0さんのコメント本当に嬉しかったです…!どれくらい時間がかかるか分かりませんが頑張ります! (2018年9月24日 14時) (レス) id: da506c070e (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:Kobato* | 作成日時:2017年7月22日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。