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弐拾漆話 ページ11

ーA視点ー

『うっ………ひっく………っ…』

龍之介「ど、どうかしたか…?」

椿「えっ…!?A…?どうしたの?」

私は今まで、"邪魔者"だの"化け物"だの、名前で呼ばれた事なんてなかった。

『あ、りがと…っりがと…!かぁさん…!にぃさん…!』

こんなにも暖かい人がいるんだって初めて知った。

私はしばらく泣いて、いつの間にか寝てしまっていた。


ーー
ーーー

起きた頃にはもう、母さんと兄さんはいなかった。

その代わり、格子の前に食べ物が置いてあった。

私は空腹に耐えられず、それを取った。

『パクッ…モグモグ…』

『…(おいしい…)』

久しぶりに食べた気がした。

何も食べてなかったわけではないが、どれもこれも味がしなかった。

『(かぁさんが作ってくれたのかな…)』

『………かぁ、さん…ありがと、う…』

私はここにいない筈の母さんにお礼を言った。

私の声は牢屋の中で虚しく消えていった。

『(今度会った時はちゃんとお礼を言おう…)』

そう心に決めて、私はもう一度目を閉じた。

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作者名: | 作成日時:2020年10月25日 10時

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