卅弐,幕間 ページ32
志賀「…………」
太宰「…………」
二人は、無言でヨコハマの町を歩く
が、只普通に歩いていると云う訳でも無い。先程の太宰のお巫山戯の通り、志賀が谷崎兄妹と中島の計三人を負ぶっている
志賀本人の怪力も助けて、それ程苦では無いのだが…
志賀は然して背が高く無いので、傍からは死体(擬)×三に脚が生えているようにも見える
太宰も太宰で、その隣を何食わぬ顔で歩いているものだから、人々の目を集めている
特に先刻は酷かった。今の状態で、しかも路地裏から出て来たのだから救えない。弁明する余地も無く、軍警に通報され一悶着だ。御迷惑をかけてしまった
そんなこんなでやっと探偵社だ。志賀は到着すると同時に、探偵社の専属医である与謝野に三人を預ける
志賀「今回芥川さんに遭遇したようで。重症者二名、粗無傷が一名の計三名です。……宜しくお願いします」
与謝野「了解、よく三人も背負って来たねェ、お疲れさん。さっき賢治が、畑絡みの知り合いから良い胡瓜を貰ったから浅漬けにして持って来たー、って云ってたから、餓鬼同士仲良く食ってきな」
与謝野は、薄らと落ち込んでいた志賀に気付き、そんな話をする
志賀「胡瓜の浅漬け……!行ってきます…!」
小さく眼を輝かせて、志賀は医務室を出て行った
与謝野「まだまだ子供だねェ、彼奴も。国木田ー」
与謝野は、志賀が出て行ったのを見届け、国木田を呼んだ
国木田「はい」
数秒して、返事と共にドアが開く
与謝野「新入りを看てやりな。疲れてるだけだから」
国木田「分かりました」
そして与謝野は、(この物語で見せるのは、まだ二回目の)悪い笑みを湛えて、治療部屋に消えた
この後、谷崎の悲鳴が社全体に響き渡ることだろう………
その頃志賀と宮沢は、美味しそうに胡瓜の浅漬けを食べていた。その隣には太宰もいる
太宰「いやー、これは美味しいねぇ。流石賢治君のお友達だ」
宮沢「本当ですよね!洗濯屋のおじさんからは、何時も美味しい野菜を沢山頂くんです。また貰ったら持って来ますね!」
太宰「それは良い!是非ともお願いするよ」
宮沢「はい!」
ニコニコの笑顔で手を上げ返事をする宮沢に、美味しそうに目を細め乍食べる太宰と志賀
何とも平和な風景だが、
太宰「さて、私は用があるので失礼するよ」
平和はあくまで事件の前触れでしかないようだ
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神楽かな(プロフ) - 面白いですね! (2017年12月12日 1時) (レス) id: 01b9535641 (このIDを非表示/違反報告)
無銘 - ルルさん» 有難う御座います。御礼が遅くなり、申し訳ありません。これからものんびりではありますが、頑張って書いていくので、どうか御愛顧下さい。 (2017年11月5日 17時) (レス) id: 6797fe50b8 (このIDを非表示/違反報告)
ルル - 面白かった!! (2017年10月17日 0時) (レス) id: 5f42220b54 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:無銘 | 作成日時:2017年5月5日 14時