廿玖 ページ29
芥川「今裂いた虎は虚像か!では―――」
云い終る一瞬前、芥川は、己の背後にある気配に気付き気味悪く口角を上げる
芥川「『羅生門・叢』―――!」
そして、この戦いの中では恐らく最大級であろう黒獣を、白虎に向ける
白虎と黒獣がぶつかる、もう誰もがそうとしか考えられないこの時に、剣呑な空気には、全く以て不似合いな声が響く
太宰「はぁーい、そこまでー」
芥川「なッ……」
そうすると、先刻の細雪で生み出した虚像のように、白虎は人間の姿になり、黒獣はそのまま消えていく
樋口「貴方、探偵社の―――!何故ここに」
樋口の其の問を待っていた、とでも云うように、外套の中からヘッドフォンと四角い機器を見せて
太宰「美人さんの行動が気になっちゃう質でね。こっそり聞かせて貰ってた」
と、平気な顔で告げた
樋口「な……真逆、盗聴器!?」
樋口が自分の上着のポケットを探れば、直ぐに盗聴器が出てくる
志賀「わー、此処に変質者がいるー。」
志賀がそれを見て、疲れからか軽蔑からか、何とも感情の無い声で太宰を罵倒する
と同時に樋口は、最初に会ってナンパされた時、既に盗聴器を仕込まれていた事に気付き
樋口「では最初から―――私の計画を見抜いて」
そう言葉を零した
太宰「そゆこと」
太宰は、清々しい程の笑顔で応えた
太宰「ほらほら、起きなさい敦君。一人でも負ぶって帰るのは厭だよ、私」
伸びている中島の頬を、ぺちぺち叩き乍云う
中島は「うー」と、下で呻いている
志賀「待ちなさい、もしかしなくてもあんた、俺に二人、あわよくば三人共運ばせようとしてますね」
太宰「当たり前じゃない、直哉君の方が若いんだもの」
志賀「たかが六つで何を……。はぁ……」
未だ敵が去っていないと云うのにも関わらず、太宰と志賀は、どちらがこの負傷者達を運ぶのかと、下らない事を話している
そこで漸く、二人がこのまま帰ろうとしている事に気付いた樋口がそれを阻止する
樋口「ま……待ちなさい!生きて帰す訳には」
芥川「くく……くくく」
だがそれは、芥川の不気味な笑い声と、制止の為伸ばされた腕に依って遮られる
芥川「止めろ樋口、お前では勝てぬ」
樋口「芥川先輩!でも!」
樋口の声等聞こえないかのように続ける
芥川「太宰さん、今回は退きましょう――
しかし、人虎の首は必ず、僕らマフィアが頂く」
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神楽かな(プロフ) - 面白いですね! (2017年12月12日 1時) (レス) id: 01b9535641 (このIDを非表示/違反報告)
無銘 - ルルさん» 有難う御座います。御礼が遅くなり、申し訳ありません。これからものんびりではありますが、頑張って書いていくので、どうか御愛顧下さい。 (2017年11月5日 17時) (レス) id: 6797fe50b8 (このIDを非表示/違反報告)
ルル - 面白かった!! (2017年10月17日 0時) (レス) id: 5f42220b54 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:無銘 | 作成日時:2017年5月5日 14時