【歌い手】職場恋愛【短編集】 (ページ21)

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「そらる君もAさんもいい加減お昼行ってきたら？」

「「え……」」

　
呆れたように笑っている小林さん、とその背後にある時計を見れば午後3時を過ぎていた。
あれから2人で鬼のように書類を片付けて、アルバイトさんのサポートをして……とかしてたら
あっという間に時間が過ぎていたのである。

　
「もう溜ってた分は終わってんでしょ？」

「なんとか…」

「んじゃ行ってきなよ。戻ってくるまで俺が見てるから。」

「……そらるさんはこばさんを見習った方がいいと思う。」

　
ジトっとした目で彼を見れば、苦笑いしていた。…これももはや月末の恒例事項である。
私達の席の隣では課長も書類とにらめっこをしながら笑っていた。

　
「そうだぞー、お前らとっとと行ってこい。」

「はーい。」

「じゃあ、行ってきます。」

　
2人、席を立ちあがってお財布を取る。
時間的に今日はコンビニだろうなぁ…と思いながら、そらるさんを見ると
またしてもアルバイトに捕まっていたので少しため息をついて、先に外に出た。

　
「なぁ小林、あの2人付き合ってんだよな？」

「…あまり大っぴらに言っちゃだめですよ。」

「言わん言わん。言って異動になったら困るの俺だからな。」

　
課長たちがそう言ってることに気が付かないで。

　
　
「あー…疲れた。」

3時の休憩のいいところは、お昼で売り切れていたお弁当とかが全部復活しているところだろう。
それにしても今どきのコンビニってすごいよなぁ…そう思いながらおにぎりと惣菜を開ける。
…私がコンビニから帰ってくるまで、そらるさん見かけなかったけどいつまで仕事してるんだろ。
そんな疑問は、突然首筋に感じた冷たさに吹き消されることになったが。

「ひゃっ！？」

「酷いなー、置いてくなんて。」

「いや、こばさんに任せないでハマったそらるさんが悪い。」

「えぇ……」

　
そう言いながらちゃっかり隣に座ってくるそらるさん。
首筋の冷たさの正体は栄養ドリンクという名の差し入れだった。

　
「またサンドイッチだけ？」

「んーあまりお腹空いてなくてね。っていうか眠い。」

「あ、はい。」

「ってわけで寝るから起こしてー…」

　
そう言って、あっという間にサンドイッチを食べ終わり一瞬で眠るそらるさん。
その才能は尊敬する…寝つき悪いから羨ましい。……でもね。

　
「まだ食べてるんだけど…私…肩重たい。」

　

私の肩を枕にするなら、寝るのもう少し後にしてほしかったよ……