[男主]新聖、そして終焉。Q+r≠Q

impossible ページ7

『たしかシンジくんはチェロができるんだったね』


｢うん、少しだけ……ね｣



『少しでもできるのはすごいよ

……よし、ちょっとまってて』





そう言ってAくんは立ち上がり、奥の方に消えていった





あの事件から数日後

彼が咳き込むところは見てないし、血を吐くところも見てないけど


定期的にしか出されない服が綺麗な辺り、あの症状は出ていないのだろう





今日はこの半壊した屋内に広い空間をまた見つけたみたいで、そこから足を放り出して空を眺めていた



この空間にはぽつぽつ、とだけど珍しく花が咲いている



ぼーっと花を見つめているといつの間にかA君が帰ってきたようでドアップで彼の顔が視界に入る




『ぼーっとして何を見ていたんだい？』



｢うわっ！？び、びっくりした！｣




『驚かせてしまったかな？ごめんね』



｢あ、いや……大丈夫だよ……！ほんとに……｣




しょんぼりするAくんに慌てて大丈夫と伝える



｢……それはそうとして……どうしたの？そのチェロ｣




彼が抱えているチェロにあらためて視線をうつす

すごく綺麗な状態で、新品のように綺麗だ



あ、そうそうとAくんはチェロをその場に一旦下ろし、話し始める



『置かれていたのを見つけてね、外に置いてあったし誰も使わないみたいだったから

ボロボロだったけど修理したんだ


たしかシンジくんが弾けると思ったから、いいかなって思ってね



しばらく運動は控えることにしたし、自前のバイオリンも持ってきたんだ

一緒に演奏しようよ』





どうやら新品のようなチェロは直したらしい


こんなに綺麗に治すなんて凄い、なんて感心してしまった

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