『あの日、首領執務室の盤上で』四 ページ13
「お先に。すぐ合流するから本部で会おう。まんまと太宰の企みを遂行させたくはないでしょう？」
「お前は彼奴の考えを読んでるだろうが！ 対応しに来いや」
「それこそ太宰の思う壺でしょ。僕に会いに来た心算でもあると思うよ？ だからこそ、もう一手打っておきたいんだけどなぁ」
「だぁ！ ああ言えばこう言うってか！ 判ったよ！ 好きにしろ糞が」
「中也君はお口が悪い」
「るせぇ！」
バタン、と扉が閉まった。やや乱暴な動作で座席に収まり、エンジンを掛ける。ステアリングを黒手袋の手で掴んで、じりじりと六院の側まで後退してから発進した。
「何を話していたんだね」
「四年前の」
呟いて、ぱちり、と目を閉じた。
広津は去っていく車のライトを眺める。砂埃を巻き上げて加速していく車。
焦り気味だ。あまり荒い運転で車体を傷めないで欲しいものだが。一刻を争うようにどんどん遠去かり、小さくなっていく。
「太宰の実力を知っていた奴は多い。でも、最もよく判っていたのは誰か。僕らと同じくらい正確に、だけどもっと早くに目を付けた人。彼奴が何処まで戦局を操り切れるか、幹部連中なんかよりずっと簡単に想像できる人」
先程、紡がれたはずの言葉たちだ。これを聞けば中也もピンと来ただろう。
そんな人間、一人しか有り得ない。彼奴を育てた男。
ポートマフィアの首領、森鴎外。
思いも掛けない人物に固まる中也の顔が想像できる。そして、六院はこう続けるのだ。
「森さんは当初、僕を使って太宰を組織から出す心算だった。僕にあの頃に与えられた任務の難易度がね、狂ってたんだよ」
ふっ、と厭そうに笑う。次の中也の顔は訝しげなはずだと想像しながら。
“難易度？ だが、あの頃って、手前、殆んど動いてなかったじゃねぇか”という返答。
「密偵を捜せと仰せつかってね。普段よりも慎重に、動きを見せずに水面下で糸を張ってた。誰にもバレないようにしろ、って話だったし。あれには骨が折れたな」
遠くを見る目を眇める。
「何せ背信を目論む阿呆とは話が違う。尻尾を出さなかったよ。どれだけ揺さぶっても、ね。それで半月くらい悶々としている間に、気付いた。誰にもバレないようにしろ、っていう首領の命令自体おかしいってね」
“密偵の調査だろ？ 当然じゃねえか”
中也の考えを読むのは楽でいい。元来の単純さに加えて、六院とは長く側で活動した過去があるのだから。傍に立つ広津を無視して、話を続けた。
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リゼ(プロフ) - とても面白くて3週してしまいました(笑)作者様の思い描く物語がどう展開していくのか全く想像できないので、楽しく読ませてもらっております。いつも作者様のこの作品を心待ちにしています！！大変だとは思いますが、頑張ってください。応援しています！！！ (2021年7月10日 11時) (
レス) id: b15481d520 (このIDを非表示/違反報告)
夜(プロフ) - アバンギャルド・マボさん» わあああ！！お久しぶりです覚えててくれたんですね！！！(´；ω；｀) がんばりますーーー！ (2021年6月10日 22時) (レス) id: d65e81f2c3 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - わぁあ待ってました！！再連載ありがとうございます！！ (2021年6月10日 17時) (レス) id: 253e5eff26 (このIDを非表示/違反報告)
夜(プロフ) - ういろうさん» ありがとうございます、遅くなっちゃいましたね。できる範囲で進めていこうと思います。コメントありがとうございました。 (2021年6月10日 2時) (レス) id: 2f72b0193e (このIDを非表示/違反報告)
ういろう - とても面白いです！六院さんの破綻された性格がすごく好きです!!続きも気になりますがあまり無理しないでくださいね！応援しています！ (2020年1月9日 0時) (レス) id: 03bfdf54f9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夜 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Drastic1/
作成日時：2018年3月28日 22時
