【文スト】中原中也の新相棒には問題があり過ぎる。【中原中也】【男主】

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十六夜の勝利から、一気に流れが変わった。元々順調に勝ちを出していた男女ペアは、あからさまではないが、少しずつ負け始めている。変化はもう一つ。


「……フルハウスだ。勝ったぞ！」

満面の笑みで拳を握るのは……まさかの、標的。
先刻まで散々な惨敗っぷりだったというのに、あれから半刻もしないうちに、負け分を取り返しそうな勢いになっている。

だが、今の流れの一部始終を見ていた俺には分かる。
此処までの展開が、裏で一人の人間に糸を引かれたものだということが。

十六夜の方を見ると、人懐っこい青年の演技を続けている奴は視線に気づいて此方をチラリと見た。

琥珀色の目が笑って、スッと意図をもって横に流される。示す先まで辿れば、廊下の暗がりに警備員が数名。集まって話し合っている。何だ。問題でも起きたか？


「？」

首を傾げる俺を見て、十六夜は唇に人差し指を当てる。シーッというポーズは言わずもがな、黙ってろって事だ。
未だに此奴の考えるところが読めない俺は仏頂面で、仕方なく腕を組んだ。


「佐原会長か。警備部から、話がある」

……分かるまで待つ心算で待機を決め込んだ俺の耳に、五分もしないうちに剣呑な声が舞い込んだ。
声の主は、壮齢の男性。一目で高級だとわかるタキシードを着ている。その脇に護衛を二人付けていることからして、恐らく……。

「誰だ？」

男は薄い唇を横に引き、低いテノールの声で語った。

「私はこのカジノのオーナーだ」

やっぱりな。標的が目つきを鋭くする。

「儂に何か用か？」

一応、ポートマフィアに資金援助をしていただけあって、慣れてはいるのだろう。驚きこそすれ、声に怯えはない。

「貴君はこの場に相応しい者でない。退場願いたく思う」

「……何だって」

「このカジノの機密性を破る恐れがあると見たからだ。貴君は、軍警の者と親しいようだからな」

オーナーを名乗る男の言葉に、俺は耳を疑った。どこでその情報を？


「“ある理由”から、貴君を調べた。
すると、此処の来客者名簿に貴君と共に、偽名を用いて入場していた軍警関係者が居た」

「……！」

標的の顔色が変わる。此奴、やっぱり。


「このカジノは、裏の関係者に向けて作られている。不純物は覗かないと、な」


オーナーが標的の背中を叩き、出口を示す。標的の苦々しそうな顔を無視したオーナーは何故か周りを見回し、飄々と佇むそいつに目を留める。


「……」


冷ややかな視線。
十六夜は微笑み、小さく肩を竦めた。

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