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4月某日・東京。先輩アイドル・
明らかに1000人以上は入ろうかというホール。そこに集められたのは3組だった。1組目は、中学生前後の、ひらひらとした淡い色のセットアップを着た五人の少女たち。次に、鮮やかな色のポップなミニドレスを着た、年齢層がばらばらな7人の少女たち。そして、黒いデザイン違いの衣装を身に纏った、お姉さんといった風の3人の少女たち。
彼女たちは、そのホールの最前列に、横並びとなって座っていた。
しんとした静寂の中、濃紺のパンツスーツを着た女性が緞帳の前に現れる。しゃんと伸びた背筋と、眼鏡の奥の瞳が見る者に強い印象を与えた。
「――こんにちは」
彼女は、自らを
スクリーンに、太い黒字のゴシック体で書かれたプレゼンテーション画面が映し出される。そのスライドの右端下にはMaryプロダクションの、浅葱色の羽が描かれた社章が入っている。
「オーディション合格おめでとうございます」
彼女はにこりと笑んだ。そして、そのまま言葉を続ける。
「もう既にお話していることですが、これから皆様にはレッスンを受けてもらいます。期間は2ヶ月後のグループお披露目までです。こちらの大舞台でお披露目を行なったあと、SNS や動画サイトで皆様の姿を配信することによりファンを増やしていき、11月3日のデビュー決定投票によりデビュー順を決めます。この結果、最も票を多く獲得したグループから順に、デビューしていくこととなります」
ここまでで何かご質問等ございますか、と彼女は尋ねたが、手を挙げる者はいなかった。
「最初に明言しておきます。客の前に立ちたければそれ相応の自覚と実力を得てください、と。皆様は確かに、メジャーデビューを約束されています。けれども、その後こそが大変なのです。ファンや自分のモチベーション、グループ内の団結力を高く維持し、更には向上しなければアイドルという仕事は成り立ちません」
それが嫌なら――趣味として存分に、配信やストリートライブをすれば良いのです。それらならば、収益化を考えなくて済むのだから。そう言い放つ彼女を見上げる目は様々であった。
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作者名:Marimo | 作者ホームページ:http://commu.nosv.org/bbs/Itoda7Marimo3
作成日時:2021年10月18日 23時