73話目 ページ10
「きいて、柚葉ちゃんと国見君がハグしてたの」
かおりさんから放たれたその言葉は、私の心に深く刺さった。
「どこでですか？！」
仁花ちゃんがそう言うとかおりさんは浮かれたような声で、食堂！といった。
なにもないですよ。
昼間の私の言葉を責める資格なんてないのに、なんで言ったんだと後悔する。
何より感じていたのは「傘村にとられた。」という絶望感。
彼女の及川さん狙い、という言葉も全くのウソで、いつからかわからないが、国見との関係も全くのウソだったというわけだ。
自分で考えたその事実にあきれ返って、悲しくなってくる。
仲良くなったと思っていたのは私だけだったのかというどうしようもない感情だった。
「すみません、飲み物買ってきますね、飲みたい人います？」
そう声をかけると、雪絵さんが「いちごー」とリクエストしてくる。
ほかの皆さんは大丈夫ですか？
そういうと私はさっき買ってきたから、のど乾いてないから、おこがましいから。と各々の理由で答えてくれた。
仁花ちゃんにはお茶でも買ってきてあげようと思い、小銭を持って部屋を出る。
道中で国見が食堂の方から歩いてきたのを見つけて、さっきの話が確信に変わる。
「あ、先輩」
そう言って近づいてくる姿が今は嘘に見える。
「なんか用？」
思ったより冷たい声色で話しかけてしまって少し反省する。
「なんかありました？」
それに気が付いた国見がやさしく聞いてくる。
「国見のせいだよ」
そういって歩き出した。
あれ以上いたらぼろが出そうだったから。
そして、最後なんだな、と思ったら泣いてしまいそうだったから。
背を向けて歩き出したのに。
彼の手に、私の腕が引っ張られる。
それに従って私は足を止めた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 454人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
いちか(プロフ) - 及川さんとの絡みが好きすぎます！ (2021年8月24日 2時) (
レス) id: 04ec5ad602 (このIDを非表示/違反報告)
白夜のダンテ(プロフ) - 割と素直なぬこさん» ありがとうございます。新作の件、参考にさせていただきます。木兎さんとの絡み…できる範囲でやりたいと思います。コメントありがとうございました。 (2021年6月24日 20時) (レス) id: 78c0d6e1f2 (このIDを非表示/違反報告)
割と素直なぬこ - 連続でコメント失礼します。新作どれも面白そうなのですが、せんぱい！をけんまで見たい！私の推しが木兎サンなので本編で絡みもっと欲しい！図々しくすみません…… (2021年6月23日 22時) (レス) id: 146f38e7d4 (このIDを非表示/違反報告)
白夜のダンテ(プロフ) - 割と素直なぬこさん» ありがとうございます！ (2021年5月18日 20時) (レス) id: 78c0d6e1f2 (このIDを非表示/違反報告)
割と素直なぬこ - 続編おめでとう！！頑張ってください！ (2021年5月18日 6時) (レス) id: 348a770f9e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：紫苑 | 作成日時：2021年5月16日 21時
