なんででしょう？【青葉城西】3巻

72話目 ページ9

国見side

先輩と仲睦まじく皿洗いをしていたら烏野のマネが入ってきた。

それだけでもムカつくのにミーティングとか言って呼び出されて先輩といる時間を減らされたことにもっと腹が立つ。

それが顔に出ていたのか花巻さんに「国見はもう寝る時間か？」と目つきをからかわれ、もう怒りメーターはmax。

それでもさすがに先輩を殴るのはいかがなものかと思い、とりあえず金田一の鳩尾を狙った。

クリーンヒットした。

「じゃあこれでミーティング終わりね。
しっかり筋トレとかしといてよ？」

そういう及川さんの言葉に各々言葉を返している先輩方を横目にキッチンへと走る。
しかしそこに先輩の姿はなく、皿もきれいに片付けられていた。

「間に合わなかった」

そう零したあと、心の中で小さく舌を打つ。
「一緒に話したかった」
口に出していないその言葉が、誰もいない食堂に響いた気がした。

どうしたの？ミーティングしてるって聞いたけど。

その言葉の主は待っていた人ではなく傘村。

「そっすね、のど乾いて。
失礼します」

テキトーに理由をつけて早々に退散したかったのだが、俺の腕をあいつはつかんだ。

「夜、怖いから、」

その先は聞き取れなかったが言わんとしていることは分かった。

一緒にいてくれない？

おそらく、いや、十中八九それだった。

「だめ？」

首をこてんと横に倒すしぐさは、世の男性がかわいいと思う仕草ナンバーワンだろう。
俺の先輩にいつかやってもらいたい仕草top５内には入っている。

本当ならごめんなさい、と言って立ち去りたいがこいつはなんせ及川さんのオキニだ。
そんなことしたらすぐに及川さんに伝わってしまうかもしれない。
そうしたら少なからず先輩にも迷惑がかかる。

そう思うと断る、という選択はできなかった。

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