story42 ページ43
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上書き薬はまだふたつ瓶が残っている。
どうせこの部屋には三人しか入ってこないし、部屋に置いておく方が安全だろう。
「今年は三人にも手伝ってもらうよ」
「またアンサンブルを？」
「中心はアンサンブル形式にして、途中でフルートとかドラムとかを入れようと思う。ここの同輩がやってくれるって言ってたから」
復帰前、モストロ・ラウンジの水槽で閉店後に泳いでいたらたまたま通りがかった同級生。
音楽が得意な彼らにゲストを頼めば二つ返事で受けてくれた。
最初はピアノひとつで、次がアンサンブル。
最後は人数を増やして総五曲ほどを歌わせてもらう。
もちろんすでに学園長とも交渉済みだ。
対価に最前で見る約束をすればすぐに手配をしてくれた。
「オクタヴィネルのみんなと各寮長にはすでに話をつけてるんだ。今回私は薬で性別を変えて出ます！ってね」
「どうせテレビは入りませんし、好きにやらせてあげようというのがこちらの総意でしたので」
あくまで主役は私たち。
外部からお客は招くけれど、客層を考えても華がないとやっていけないだろう。
「えー、オレなんかやだあ」
「どこが嫌なんです？」
「だってぇせっかく魔法かけて男になってるのに元に戻ったみたいでなんか変な感じするー」
どうにかこうにか聞き出すと、要は四人だけの秘密なのにその姿に戻るのがどうも気に入らないらしい。
「ああ、じゃあ別の姿にするよ。背丈はそのままで顔と髪型を変える」
「どんなのにするんですか？」
「それは当日までのお楽しみ〜」
ドレスは昔に着たものをそのまま着回せばいいし、それに似合う髪にすれば問題もないだろう。
確か部屋の奥にこういうときにしか使わない化粧品があったはずだし。
舞踏会が楽しみだ。
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作者名：桜井庵 | 作成日時：2020年6月28日 22時
