story38 ページ39
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「今度の舞踏会、どうか僕と踊ってはいただけませんか？」
監督生には「モストロ・ラウンジの経営がある」と言っていた。
私に「歌ってほしい」と言っていた。
ああ彼は。
私のために時間を無理矢理空けてくれたのか。
「……もちろん」
とろけるような笑いも、この姿も私だけが知っていればいい。
そうなればよかったのに。
こんこん、と部屋の扉が叩かれた。
水槽から顔だけ出して、どうぞと声をかける。
開けた扉の先には双子がいた。
「すみません、アズールを見ませんでしたか……おや」
「あ！いいなぁ水槽！オレも入りたぁい」
「なに？書類？」
「そうです。今週末提出の予算表をまとめたので目を通してもらおうかと」
「それ今じゃなきゃまずいやつ？」
「いえ、まだ期限まではありますし特には」
「じゃあ二人も入っていきなよ、わかると思うけどハンガーはそこのラックにあるから。書類は机の上にでも置いておいて」
タコやウツボは肺呼吸ができないので、アズールは水槽に潜ったまま二人を見ている。
さくさくと服を脱ぎ出すフロイドに、ジェイドがその服をハンガーに掛けてから最後にハシゴを上った。
どぷん、としぶきをあげて二匹のウツボが入ってくる。
私もまた水槽に潜った。
「ひろぉい、あかるぅい」
「水草とか岩とかはないから、ほぼほぼプールだけどね」
「たまには気分転換もいいですね。モストロ・ラウンジの水槽はどうにも人目が気になって……」
こう見ると、喋ってくれないと双子は見分けがつきにくい。
私でこれなんだからアズールなんてもっとダメだろう。
ブルーのヒレを動かしてくるりと回った。
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作者名：桜井庵 | 作成日時：2020年6月28日 22時
