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行く宛なんてものは無かった。
家が知られてしまったのだ。たとえ戻ったとしてもまた待ち伏せしているに決まっている。
なんて1日なんだろう。

朝方は1日中曇り空だというニュースを聞いて、いつもよりいい気分だったのに。
今は気分が落ち込むばかり。ここから気分を持ち直すのは、中々に骨が折れそうだ。



家を出てからは、はや歩きをしている。
食事中を覗いていたと言っていたので、ただただ足を動かした。
男の目を欺くために好きでもない人混みをわざと選んで歩いた。


なんの理由もなく、立ち止まった。
少し顔を右に向ければ大きな窓ガラスに、自分の姿が映っている。
いつもの愛想のない顔。見るからに疲れが全面的に出てきているのか、
暗い雰囲気を漂わせていた。




『……これが女神だなんて…笑えるわね…』



窓ガラスに映る自分はピクリとも笑っていない。
まぁ今は到底笑う気分になどなれないから、当然なのだけど。

こんな所で突っ立っていても仕方ない
一度、懐から財布を取り出して中を確認してみる。
決して高いとは言えない金額に、また少し気分が下がってしまう。


さて、どうしようか。まずは宿をとらないと。安いホテルにでも泊まろうか。
1日だけ泊まるのでは流石に駄目だろう。
あの男の執念は1日やそこらで消える気がしない。
出来るなら一週間程がいい。その間自宅には帰れないことになる。


どれだけ安いホテルでも、この金額で一週間泊まるのは無理だ。
とりあえず今晩だけでもどうにかしなくては。

とにかく、一晩だけ泊まろう。
それからのことはその時考えるしかない。


そうと決まれば、お財布に優しい値段の宿を探そう。
あまり外出しない私は、特定の建物がどこにあるかも知らないのだから
きっと時間がかかる。

頑張らないといけない。


財布を懐にしまうと無意識のうちにため息が出ていた。
やはり気疲れでもしているのだろう。今日ははやく休みたい。



ポタ、と小さな音が聞こえた。
随分と聞き慣れた、好きな音が。



『……、うそ…』



ポタポタと至る所から聞こえてくる。
信じたくなくて俯かせていた顔を上げれば
雨がしとしとと降り始めていた。



『…天気予報、雨が降るなんて…』



夜まで曇り空だと、確かに言っていたのに。
いつもは好きな雨を、鬱陶しいと感じたのは初めてだった。





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よる - お話の流れがめちゃくちゃ綺麗でスラスラよめちゃいました!面白かったです!続き楽しみにしてます! (2022年8月26日 21時) (レス) @page21 id: 51420f01b3 (このIDを非表示/違反報告)
紗夜(プロフ) - 続きを…続きをください!_○/|_ (2022年4月14日 3時) (レス) @page21 id: 5c2d649dea (このIDを非表示/違反報告)
ぼんど(プロフ) - めちゃんこ面白いです!!これから銀ちゃんや土方さんとどんな関係になるのか気になります!更新待ってます! (2022年2月7日 21時) (レス) @page21 id: 35902c24cd (このIDを非表示/違反報告)
キーさん(プロフ) - 更新!!待ってましたー!!ありがとうございます今回も良かったです!作者様のペースで頑張ってください! (2021年4月7日 23時) (レス) id: 1d2c287881 (このIDを非表示/違反報告)
- 続きが気になります!更新お待ちしております (2021年4月1日 23時) (レス) id: 5f29fe8655 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:A | 作成日時:2019年4月14日 22時

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