作戦参謀 8 ページ11
その日から、Aの日常は180度…とまではいかないが、90度程変わった
今まで、通るのも億劫だった廊下では
「はよ、A」
「あっ、お、おはようございます!」
中也に笑顔で挨拶をされ、Aは慌てて頭を深く下げて挨拶をした
それを見ていた他の構成員がぎょっとしたように2人を見る
「おい、中原幹部が…」
「あの作戦参謀に?」
ヒソヒソと聞こえ出す陰口に、Aは口を噤んで俯いた後、中也に顔を向けた
「では、私急いでいますので、失礼します」
前の様な態度でそそくさと去っていくAの姿を見て、構成員達は笑う
「陰口にも顔色変えないのは凄いよな」
はは、と笑い合う構成員2人の間の壁に、ボゴォッ!と音を立てて穴が空いた
悲鳴を上げて壁を見れば、その原因は拳で
前を見れば、青い瞳を鋭く光らせて睨みつける中也の姿があった
「…彼奴を馬鹿にしたら次はお前らの顔面に穴開けてやるよ」
地を這うような声音に、構成員らは頭を下げて逃げていった
「すっ、すみません!」
尻尾を撒いて逃げていった2人が見えなくなると、中也は周りで固まっている他の構成員に
「…手間ェらも、覚えとけよ」
とだけ言い、返事を聞くと、Aが去っていった方向に走り出した
(…下手くそなんだよ、表情作るの)
中也は先ほどのAの…無表情にし損ねた、Aの悲しげな表情を思い出した
(きっと、今頃…)
頭に浮かぶ、Aの蹲った姿
中也は拳を強く握って、Aを探し始めた
「はあっ…、はぁ」
Aは走って偶然辿り着いた資料室に駆け込んだ
其処に入ると、外の騒めきや、自分に対する否定の目や冷たい視線が一気に消えて、辺りがとても静かに感じられた
「っ…」
すぐにその場に座り込み、自嘲気味に笑う
「…逃げてきちゃった」
先程の中也の暖かな笑顔が、水の中にあるように霞んで、歪んでいく
(嬉しかった、挨拶されて、挨拶して、嬉しかった)
なのに、それだけの事で、前と同じように囁かれる、自分への陰口
「…これじゃ、中原幹部まで陰口言われちゃうよ」
(やっぱり、この職場で誰かと…、否、中原幹部とお友達なんて、無理だったのかな)
悲しくなって、目尻に涙が浮かぶ
耐えきれなくなって、顔を膝に押し付けたところで、がらり、扉が開いた
「…其処にいるのは…七瀬くんかい?」
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AS(プロフ) - うさぎらっぱさん» ご指摘ありがとうございます!全く気づきませんでした…脱字気をつけます…! (2017年7月6日 22時) (レス) id: f709ff2152 (このIDを非表示/違反報告)
うさぎらっぱ - あの…突然ごめんなさい!!設定の前のページ4で中也のセリフで、多分「落ち着いたか?」だと思うんですけど、「落ち着いか?」になってます!違いますかね…?汗 (2017年7月6日 21時) (レス) id: c9d3db91be (このIDを非表示/違反報告)
AS(プロフ) - ロムさん» いえいえ、お気になさらないで下さい!ボス、と片仮名で表記するより首領、の方が格好いい…という作者の考えもあります(笑)嬉しいお言葉、ありがとうございます!とっても感激です!(´▽`*) (2017年6月30日 22時) (レス) id: f709ff2152 (このIDを非表示/違反報告)
ロム - ASさん» 意図的にですか。本当に申し訳ありませんでした。内容自体ホント好みド直球だったんで、少し気になってたんです。本当にすみません。m(__)m (2017年6月30日 21時) (レス) id: 693a45f20e (このIDを非表示/違反報告)
AS(プロフ) - ロムさん» ご指摘ありがとうございます、実は意図的にそう呼んでいます、お気にさせてしまってすみません! (2017年6月28日 18時) (レス) id: f709ff2152 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:AS | 作成日時:2017年5月26日 17時