折り鶴と、千羽鶴と。 【練紅覇】

第参拾参章・「君」 ページ33

千鶴と会ったのは、今から十年前。

九歳の夏頃。

お忍びで城から少し離れた向日葵畑を散歩していたとき、

千鶴に初めて出会った。

その日は今日みたいに快晴で、雲ひとつない、澄み渡った綺麗な青空だった。


君はそんな場所でひとり、太陽の光りで輝く向日葵畑の中に身を隠しながら


泣いてた。


煌帝国では珍しいと言われている漆黒色の―黒曜石のような綺麗な瞳を潤ませ、

その瞳から零れ落ちる透明の雫を真っ白な手の甲で拭いながら･･･


君は色白の肌に映えるような赤色のワンピースに、桃色のリボンがついた麦わら帽子、

そして桃色のリボンがついたサンダルを着用していて、

帽子から除く髪は、淡く水色がかかったストレートの銀髪。

その髪は顎の位置までで切り揃えられていた。



僕はその時、君が仕方なく気になって、

どうにか慰めてあげたいと思って。

でもどうしたらいいか分からなくて。


うんうん唸っていると、不意に僕の紅色の髪に真っ白な蝶が止まった。

すると、くすくすと可愛らしく笑う声が聞こえる。


その笑い声が君だったわけで。


君は雪のように真っ白な肩を震わせながら、片手を口に当ててくすくすと笑い、

「髪飾りみたいだね」と僕の目を見てそう言った。


その笑顔がとてもとても綺麗で、可愛らしくて。


僕はその時、幼いながらも

君に･･･恋に落ちました。


そのあと、僕と君は沢山お喋りをした。

だけど君は、さっき泣いていた理由を教えてはくれなかった。

でもいつかきっと教えてくれると信じて、


僕はその日からずっと、君に会いに、向日葵畑へと走ったんだ。



だけど、始まりは長いくせに、頑張らないと始まってくれないくせに


終わりは儚くて、一瞬にして終わるんだ。


まるで蝉の一生のように。


*


僕はその日も、初めて会った日からの日々と同じように

城を抜け出しては向日葵畑へと走った。


最近は君がいない時が多くて寂しかった

だけど今日はとっておきのプレゼントがある。


手で軽く握っているプレゼントを横目で見、

気に入ってくれたらいいな、と期待に胸を膨らませながら

向日葵畑へと、いつもよりも心なしか早く足を動かした。


向日葵畑に足を踏み込み、君の姿を探す。


するとすぐさま君の姿が視界に入り、

今日は来てくれたんだ、と嬉しくなって君の近くまで小走りで向かった。

君は僕が近くまで来ると、小さく手を挙げて「やっほー」と言った。


心なしか、寂しげに

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