第拾玖夜・「心配性」 ページ19
私は何度も何度も何度も「ごめんなさい」と呟きながら、
ばらばらになった紅色の折り鶴を全て拾い集めた。
月明かりは悲しげに。
桜の花びらは寂しげに。
未来は闇色だと、そう告げているかのような夜空に光る小さな星は
惨めに折り鶴を拾い集める私を嘲笑するように輝いていた。
*
「・・・・・・!・・・・・・!!・・・ぃ!!・・・・おい!!!!」
「A!!!!!!」
ハッと我に返り、そっと声のした方向を見る。
そこには心配したような表情の神官さんがいた。
「何回もAの名前、呼んだのに気づいてくれねーなんて・・・
いつもならすぐさま返事してくれんのに・・・・
A、俺がいない間、何かあったのか?」
そう聞かれ、どう答えていいか分からず、ゆっくりと俯く。
あの日――
紅覇に恩人から貰った折り鶴を破られてから、数ヶ月の月日が経った。
その数ヶ月の間、神官さんはシンドリアに遊びに行っていたもよう。
そして、今日の朝、帰ってきた。
―あれから紅覇と話したことなんて一度もない。
名前だって呼べない。声さえもかけれない。
挨拶もできない。
もう、私は紅覇に嫌われてしまったのだ。
「Aの上司・・・シエル・・・だったっけ?・・・シエルに聞いたけど、
A、最近ずっと、休みも取らずにずっと仕事してるって・・・。
体、大丈夫なのか?」
「シエル・・・そんなこと、言ってたの?」
「・・・・・・ああ。勝手に聞いて、ごめん」
ふるふると顔を横に振る。
そして俯かせていた顔を上げた。
視界に映る窓。
その窓から見える景色は、珍しく雨だった。
空は灰色の雲で覆われ、太陽を隠している。
天から降り注がれる雨は、冷たく淋しく窓にひたりと当たると
悲しげに落ちていく。
ここは、私に与えられた居場所。
つまりは自室。
神官さんは見かけによらず真面目だから、
不法侵入ってわけではない。
ただ、ノックの音が聞こえなかっただけ。
小さな木の椅子に座る私の隣に寄り添ってくれる神官さん。
この人は、本当に優しい方なんだなと、心からそう思った。
汚く狭い心を持った私とは比べ物にもならない。
私は、ただ心に安らぎを与えたくて、
ぽつりぽつりと、
降り注がれる雨のようにゆっくりと
紅覇との出来事を神官さんに打ち明けた。
すると、神官さんは思いもよらない言葉を口にした。
「Aは紅覇のことが好きなのか?」
第弐拾夜・「いーこと」→←第拾捌章・「Good-bye forever.」
42人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「アニメ」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あぉぞら - すいません!紅覇くんの消してしまいました…。短編集書いてるので、良ければそちらを…!すいません!玲琉.さんの作品、大好きなんでこれからも読ませて頂きます! (2015年6月22日 1時) (携帯から) (レス) id: 0a5444ed6a (このIDを非表示/違反報告)
玲琉.(プロフ) - あぉぞらさん» コメントありがとうございます!そう言ってもらえてすごく嬉しいし励みになります・・・! あぉぞらさんの小説は時間があれば是非読ませて頂きます・・・! (2015年6月9日 18時) (レス) id: 7d3c1dd707 (このIDを非表示/違反報告)
あぉぞら - 私、小説の一気読みはしないんですが、この小説は面白すぎて一気読みしました!私も紅覇くんの小説かいてるので、良かったら見て下さい! (2015年6月9日 1時) (携帯から) (レス) id: 0a5444ed6a (このIDを非表示/違反報告)
もちづき。(プロフ) - 玲琉.さん» ひえええぇありがとう・・・!!発想力というか妄想りょ((ゲフンゲフン。うん!ちょっと息抜きとかに読ませてもらうね! (2014年12月29日 14時) (レス) id: 8ea19f9ae6 (このIDを非表示/違反報告)
玲琉.(プロフ) - もちづき。さん» 来てくれて有難うー!!!!つきちゃんは文才あると思うよ^^っていうか恋愛のシチュエーションとかの発想力がすごいと思う!この小説はマギ知らなくてもわかる内容だと思うよ・・・!多分・・・!良ければ全部読んでやってね()綺麗な文章とか何それ嬉しすぎ>< (2014年12月29日 14時) (レス) id: 754b0bfd10 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:玲琉. | 作成日時:2014年4月4日 18時