折り鶴と、千羽鶴と。 【練紅覇】

第拾捌章・「Good-bye forever.」 ページ18

紅覇は無表情のまま、壁に突き刺した如意練刀を抜く。

彼はそれを背中に背負いなおすと、

見たこともないような憎悪に満ちた瞳で私を睨んだ。



「許さない」




そう、言葉を付けて。




彼は懐から何かを取り出す。

そして、またにこりと愛らしく笑うと、

閉じていた手を開いた。


そこには、私が恩人から貰った、


紅覇の髪色と同じ、目の冴えるような真っ赤な紅色の


折り鶴が乗っていた。




「どう･･･して･･･」




いつも持ち歩いているはずの折り鶴を、何故彼が持っているのか。

わけがわからなくなって、

取り敢えずいつも折り鶴を入れているポケットの中を片手でまさぐる。

しかしその中には折り鶴は入っていなくて。


彼は何故私の折り鶴を持っているのかは答えず、

ただ無言で、可愛らしく、恐ろしい程に笑顔。





「Good-bye forever･･････折り鶴ちゃん」






妖艶に嗤うと、

折り鶴の頭が飛んでいった。



それと同時に、紅覇の背後にある窓から見える夜空に

薄紅色の桜の花びらがひらひらと舞う。



月明かりに照らされ、

目立つ白い肌と、綺麗な紅色の髪。




そして、

輝く紅色の紙。




状況が理解できない。

目がきょどきょどと動く。

ひらひらと空中に舞う紅色の紙はまるで、桜の花びらのよう。

それらは私の体に降りかかると、髪に絡まったり地面に落ちたり体にまとわりついたりする。

足に力が入らなくなり、かくんと膝から崩れ落ちた。

彼は無表情のままこちらを見ている。





「･･････僕はお前が世界で一番大嫌いだ。もう一生僕の名を呼ぶな」




我に返ると、そんな低い声が頭の中に焼き付くように入ってきた。

耳の奥でキーーンというような音が聞こえる。

体が震えて、声もまともに出せない。 呼吸さえもまともに出来ない。

ただ「あ･･･ぁ･･･」と喘ぐことしか出来ないでいる。

目の奥が熱くなり、何とも言えない感情が心を支配し始める。



気づいたときには、

彼はもうどこにもおらず、視界にはびりびりに･･･粉々に破られた紅色の折り鶴が

辺り一面に、ただただ広がっていた。



「ごめんなさい･･･ごめんなさい･･･ごめんなさい･･･」



これは、彼が私に仕返しを下したことなんだ。

怒るところではない。

大事なものを破られてしまった。けれど、怒れないんだ。


私だって同じことを彼にしてしまったのだから。


仕方のないことだ。

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