第参拾伍章・「プレゼントさえも」 ページ35
「あ、それと、早く恋人つくりなよ?
紅覇君はとってもいい人だから、すぐに見つかると思うけどね」
君は初めて会った時と同じように、口元に手を当てくすくすと可愛らしく笑った。
つられて薄く微笑むと君は「あ、やっと笑ってくれた・・・!」と嬉しそうな顔をした。
でも、どこか悲しそうで
「そういえば私、病院を抜け出してここまで来たんだよ
すごいでしょう?」
「それ、ダメなんじゃ――」
「だって今日で最後なんだもん。紅覇君に会いたかったんだもん。
仕方ないよ」
君がそう言い、儚く笑った表情に重ねて、
時計台の鐘が鳴り響いた。
その時、君は小さく口を動かした。
*
「・・・はい、千鶴、プレゼント。
真っ白な蝶の髪飾り。
初めて会ったとき、すごく嬉しそうに眺めてたよね!
好きなんでしょ? 白色も、蝶も。
だから僕、自分で働いたお金で買ったんだよ! すごいでしょ!
ねぇ・・・だから、褒めて?
いつもみたいに笑って、紅覇君すごいねって褒めてよぉ・・・
褒めることじゃないけど、褒めてぇ・・・・
ううん。褒めてくれなくったっていい。
せめて笑ってよ。 ね?
お願いだから、目を覚ましてよ
お願い
皇子の命令は絶対服従なんだよ?
ねぇ、目、覚ましてよ・・・・
千鶴・・・・・・!!!」
渡すはずだった雪色の蝶の髪飾りは
渡すことさえもできなくて。
君は時計台の鐘の音を悲しげに聴き終えると
僕の腕の中で眠りについた。
君はもう一生目を覚ますことはない。
もう二度と、
話すことも
遊ぶことも
笑い合えることも
できない
もう二度と。
十五歳の夏
君は僕の腕の中で静かに息を引き取った。
「す」「き」「で」「し」「た」
という言葉を残して。
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あぉぞら - すいません!紅覇くんの消してしまいました…。短編集書いてるので、良ければそちらを…!すいません!玲琉.さんの作品、大好きなんでこれからも読ませて頂きます! (2015年6月22日 1時) (携帯から) (レス) id: 0a5444ed6a (このIDを非表示/違反報告)
玲琉.(プロフ) - あぉぞらさん» コメントありがとうございます!そう言ってもらえてすごく嬉しいし励みになります・・・! あぉぞらさんの小説は時間があれば是非読ませて頂きます・・・! (2015年6月9日 18時) (レス) id: 7d3c1dd707 (このIDを非表示/違反報告)
あぉぞら - 私、小説の一気読みはしないんですが、この小説は面白すぎて一気読みしました!私も紅覇くんの小説かいてるので、良かったら見て下さい! (2015年6月9日 1時) (携帯から) (レス) id: 0a5444ed6a (このIDを非表示/違反報告)
もちづき。(プロフ) - 玲琉.さん» ひえええぇありがとう・・・!!発想力というか妄想りょ((ゲフンゲフン。うん!ちょっと息抜きとかに読ませてもらうね! (2014年12月29日 14時) (レス) id: 8ea19f9ae6 (このIDを非表示/違反報告)
玲琉.(プロフ) - もちづき。さん» 来てくれて有難うー!!!!つきちゃんは文才あると思うよ^^っていうか恋愛のシチュエーションとかの発想力がすごいと思う!この小説はマギ知らなくてもわかる内容だと思うよ・・・!多分・・・!良ければ全部読んでやってね()綺麗な文章とか何それ嬉しすぎ>< (2014年12月29日 14時) (レス) id: 754b0bfd10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玲琉. | 作成日時:2014年4月4日 18時