折り鶴と、千羽鶴と。 【練紅覇】

第参章・「捕獲完了」 ページ3

「･･････やっとつかまえた･･････」


聞きなれたあの低い声が耳元で聞こえた時にはもう、遅かった。


「よし、捕獲完了ー。さ、返して」


強く掴まれた腕はどれだけ振っても離すことは出来ない。

(そんなことは経験上、馬鹿な私でも承知してるけど)


私の腕を掴み、捕獲した紅覇は片手を私の前に差し出して「返せ」と言ってくる。

おそらくはこの盗んだ写真立て･･･否、写真のことだと思うけど


「えぇ〜? 返すって何を? 私、なぁ〜んにも盗んでないけど〜?」


なんておちゃらけてみる。

当然、盗んでないのは嘘だし掴まれていない方の手には写真立てを抱えているから

説得力も何もないけどね。


「はぁ･･･毎日こんなことして、何が楽しい･･･? 僕、いい加減疲れるんだけどぉ〜」

「毎度、お騒がせしております!」

「ちょっとは反省してくれない?」


不機嫌そうな紅覇に、こちらも不機嫌な顔をして「え〜やだぁー」と返す。

紅覇は差し出していた手で顔を覆い、「呆れた」と呟いた。


「その悪知恵をもっと頭に使いなよ」

「え、ごめん。私能なしだからできないんだ」

「････真顔で返さないでくれる････?」


紅覇はそう言い、私の全てに呆れたといったような蔑んだ表情で見下した。


「今日もいい天気だね〜」

「話逸れてる。ほら、さっさと返せよ」

「やーだねっ･･･っていうか、私ここにいるんだから奪い取ればすぐに済むんじゃないの?」


素朴な疑問を投げかける。

すると紅覇は目を泳がせながらしばし悩んだあと、


「大事な写真に傷をつけるのが嫌だから」


と答えた。


どうやら紅覇はもし奪い取ったとして、その時の反動とかで写真立てや中身の写真に

傷がついたりするかもしれないのが嫌らしい。


「だから、手渡しで渡して欲しいと」

「そうそう、そういうこと･･･分かっただろ? なら早く返して」

「････」

「早く」


ざわざわと、人ごみから聞こえてくる騒音が痛いほど耳に入ってくる。

紅覇は相変わらず、急かすような、イライラとした顔で私に手を差し出す。

自然と片手で写真立てを抱える力を少し強くなる。

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