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それからは、何かと忙しかった。
一ノ瀬家の使用人の皆に言い訳を含めた挨拶から始まり、部屋の移動、一ノ瀬家の知り合いの方々にご挨拶。
といっても、私は昔から社交界やパーティには顔を出していたので困ることはあまり無かったが。ただ、
「あらぁ、ようやく結婚するの!多分貴方達私の知り合いの中で一番遅かったわね」
だとか
「今から結婚するのか?もう隠し子とかいるんじゃないか?」
とか
「おっそいわねぇ、いい加減私が遥奪おうと思ってたわよ」
とか。
余計なお世話よ!ぶちギレ案件だわ!(テンション可笑しい)
因みに最後は柚だ。
そんな冗談を言いながらも、彼女は私達を祝福してくれた。
…きっと彼女も、遥が好きだったんだろうな。
それでも私の事を祝ってくれるのだから、私は良い友達を持ったのだろう。
そして、それらが終わればすぐに結婚式の準備に取り掛かった。
予算の中から式場探し、遥のタキシードと私のドレス。
仲人は柚にお願いすると、それを快く引き受けてくれた。
その他にも、色々することは多かった。
─────そして、今。
結婚式の、前日。
今日も私は遥の部屋にいた。
最近は二人で遥のベッドで寝ることが多いけれど、今日も多分そうなるのだろう。
「…ねぇ、鈴」
「何?遥」
ベッドに座って抱き締められたまま、そう返す。
「明日だよ、結婚式」
「…そうだね」
「緊張する?」
「そりゃ、まぁ」
そんな、短い言葉だけの会話を交わす。
「…そっか」
そこで一度、会話が途切れた。
そこに流れる沈黙さえも、今は心地良い。
「…俺ね、死んでも鈴の手を離さない自信ある」
そう言って彼が握った私の左手には、前に貰った婚約指輪がはめてある。
「…私も、もう離したくない」
私も、その手をぎゅっと握り返した。
耳元で、遥が笑ったのが分かった。
「鈴」
そう呼ばれて振り向けば、降ってきたのは彼の唇。
合わせるだけのそのキスも、私にはそれで充分だった。
「…愛してる」
「…私もだよ」
二人で微笑んで、再び唇を重ねた。
fin
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作者名:月見だんご | 作成日時:2018年3月31日 23時