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パーティの翌々日。
普段通りに戻って、御主人様に朝食を届けたキッチンまでの帰り道。
泉さんとばったりと出くわし、そこで呼び止められた。
「鈴さん!あの、今日どこかゆっくりお話できる時間ってありますか…?」
その問いに、エプロンのポケットに入れてあるスケジュール帳を見ながら答える。
「10:00から11:30まで何もやることないけれど…そこで良いかしら?」
その言葉に彼女は頷き、ありがとうございますと頭を下げて中庭に向かっていった。
どこか胸騒ぎを覚えながらも、私は彼女を呼び止める事はしなかった。
仕事をある程度片付け、彼女の部屋に向かう。
軽くノックをして、扉の向こうから聞こえる「はい、どうぞ」の声が聞こえたのを確認してドアを開けた。
彼女は各部屋に置かれているコンロの前に立って、お湯を沸かしていた。
「あ、何処にでも座ってください」
その泉さんの言葉に甘えて、椅子に座らせてもらう。
少しして、泉さんがコーヒーを運んできた。
「ありがとう、」
目を細め、砂糖も何も入れないホットブラックコーヒーを口に含んだ。
ほろ苦いその味が、私には丁度良かった。
「…ところで、お話って何かしら?」
その言葉に、自分のコーヒーを入れていた彼女の手が止まった。
そして、ゆっくりと顔を上げた。
「…いけないとは分かっていました。許されない事だって。
…遥様を、好きになりました」
その言葉は、私の思考回路を停止させるのには充分すぎる程だった。
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作者名:月見だんご | 作成日時:2018年3月31日 23時