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そのまま談笑しているとそろそろ時間になったらしい、一ノ瀬家のお抱え運転手兼庭師のスガミさんが呼びに来た。
廊下に出て歩き続けると、玄関に出た。
そこには、桜様と和博様が並んで立っていらっしゃった。その隣に、付き添いの泉さんとトーマさんが立っている。
「それでは、行こうか」
和博様の言葉に皆が軽く頷いて外に出た。
今時じゃ珍しいリムジンに乗って、私は窓の外を眺めていた。
流れていく建物、人、車。
都会の喧騒に揉まれているようだ。
ぼーっとそんな景色を眺めていると、誰かに肩を触れられた。
それは、
「遥…どうしたの?」
眠そうに、控え目に欠伸をする彼。なにかあるのかと首を傾げると、遥は口を開いた。
「膝枕…借りて良い…?」
それか、と僅かに苦笑して頷いた。
「いいわよ、着いたら起こしてあげる。あっちじゃ一杯話しかけられるだろうし」
ありがと、と微かに聞こえた声と共に私の膝に頭をのせた。
そのあとすぐに聞こえてくる穏やかな寝息に、ほうっとため息をつく。
「私の気も知らないで…」
彼のふわりとした髪を撫でる。とても触り心地が良かった。
男性なのに、抜けるように白い肌。長い睫毛、形の整った唇、黒い柔らかな髪。
そのどれもが、私の鼓動を速くさせるのには十分だった。
…けれど、この想いはこの先ずっと隠していかないといけない。
でも、隠しておくには余りにも大きすぎたのだ。
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作者名:月見だんご | 作成日時:2018年3月31日 23時