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泉さんに「それじゃあ頑張るのよ」と声をかけて部屋を出て、御主人様の部屋に向かう。
これからパーティが終わって一ノ瀬家に戻ってくるまでは、ほとんど御主人様の側から離れる事は無い。
それが私の、パーティでの仕事だ。
彼の部屋の扉を三回ノックして入ると、彼の身支度も終わっていた。
「ん、やっぱり鈴は青が似合うね」
ベッドに座ってふわりと笑う彼はワインレッドのシャツに黒と青、白のラインの入ったネクタイを締めて黒ベストを着てロングジャケットを羽織っていた。
「御主人様…いや、“遥”もよく似合ってるわよ」
パーティだけの呼称に変えると、彼は嬉しそうに笑った。
「やっぱり俺はそっちの方が良いんだけどなぁ…御主人様ってくすぐったい」
そういう彼に肩を竦めた。
「ここに来る時に決めた約束、簡単に破る事なんて出来ないもの」
それは分かってるけど、と彼は困ったように指に自分の髪を巻き付けた。
「まぁいっか…時々だけどパーティとかはあるしね」
そう言った彼は座っているベッドの自分の隣をポンポン、と叩いた。
それに従うようにそこに座ると、さら、と少しの音がして髪を触られた。
「んー…今日はどうしようか」
「なんでも良いわよ、貴方の手先器用だもの」
そう〜?と遥は気の抜けた返事をした。そのまま髪が編まれていく感覚があった。
されるがままにしていると、もう終わったらしい。
「今日はシンプルにした。鈴はあんまり派手じゃない方が良いし」
いくつかの鏡を駆使して頭の後ろを見せてくれた。
ご丁寧に、ラインストーンの付いた黒レースのリボンまで付いている。
「流石ね…いつもありがとう」
後ろを向いて微笑むと、どういたしましてと彼も口角を上げた。
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作者名:月見だんご | 作成日時:2018年3月31日 23時