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あるギャング組織の本拠地の一部屋。
そこで私はカメと向かい合うように座っていた。
何故こうなっているのか私にはわからない。
けれど不貞腐れたなんて言葉が似合う様子で私はこう溢した。
『Bonjour、ポルナレフ。すっかりイタリアに馴染んでるね。
イタリア語も流暢に使いこなしてるって噂聞いたよ。
本当…なんで私はあんなに頑張ってフランス語を覚えたのかって話になるけど』
「いや…そのなんだ、久し振りだなA。
そっちはずいぶん大人になったじゃあないか…」
皮肉混じりに言うと返ってきたのは聞き馴染みのある声。
けれども声音も口調も、私の知っている声より何倍も大人しくなっている。
渋くなったと褒めるべきか変わってしまった声に物寂しさを覚えるべきか。
少なくとも銀の戦車もハートのピアスも、電柱みたいな髪型も見当たらないこの状況を喜べるポジティブさは持っていなかった。
『……』
なに、カメって。少年からポルナレフに何があったかは一通り聞いた。
ずっと一人で戦い続けていたのに五体満足のポルナレフと会えると思っていた数分前の私を粉微塵にしてやりたい。
もし事情を知れたのならここまで背負わせることがなかったんじゃあないか。
そんな考えが離れずにポルナレフであるカメにそっと触れると彼が明るいトーンで告げた。
「そんなに思い悩むな、この身体も結構いい物だぞ。
ホラ、お前のスタンドと丁度友達になれるサイズだ」
『……』
まるで落ち込んでいる妹を慰める兄のような優しい声音が一層胸を締め付ける。
決して叶うことがないはずなのに頭を撫でられている包容力が伝わってきた。
…後悔先に立たず、だ。本当に。
たらればを考えても意味はない。
彼の優しさに触れた後真っ直ぐとポルナレフを見つめて最大限の感謝を込める。
『……ポルナレフ、ありがとう』
「どうした急に?礼を言われることなんて…」
『カメの身体にしがみついてまで生きてくれててありがとう。
その間も諦めずにずっと耐えててくれてありがとう』
驚いている様子のポルナレフに構わずひたすら感謝の意を示す。
全部本音で心からの会えなかった十三年分の気持ち。
『私はそのお陰でポルナレフとまた会えたから、ありがとう』
カメの表情なんてわからない。
けれど私にはいたずらっぽく笑うポルナレフの姿がハッキリと見えた。
「そこはMerci beaucoupだろ?A」
姿形は変わっても、なんて言葉はよく言ったと思う。
終わり ログインすれば
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酸性雨の1つ(プロフ) - 蛸山葵さん» いえいえ、、貴方こそが神なのです。崇め讃えます。 (2月3日 21時) (レス) id: f35602649d (このIDを非表示/違反報告)
蛸山葵(プロフ) - 酸性雨の1つさん» まさか私の知らぬ間に降臨していたとは……。神の名に恥じぬよう頑張りたいと思います! (2月3日 21時) (レス) id: eddcdf4797 (このIDを非表示/違反報告)
酸性雨の1つ(プロフ) - 、、、神が此処にいますね存在してますね (2月3日 11時) (レス) @page50 id: f35602649d (このIDを非表示/違反報告)
蛸山葵(プロフ) - 憂さん» 「続きが見たい」と言ってくれてとても嬉しいです!申し訳ありませんが変にダラダラと続けるよりは今区切っておきたいと思いまして…。まだ拙い文ですが読んでくださりありがとうございました。 (11月7日 21時) (レス) id: eddcdf4797 (このIDを非表示/違反報告)
憂(プロフ) - お、、終わっちゃうんですか!! できることなら続きが見たいです 間違いであってくれぇ〜 (11月7日 0時) (レス) @page50 id: fbaa8ffb84 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蛸山葵 | 作成日時:2023年8月28日 23時