“青春”というもの ページ47
『ハンカチ?』
「ン」
空条邸でお茶でも頂いていると、承太郎がふとタンスからハンカチを出した。
ぴらっとそれを広げるとハンカチの中心に何か書かれているのがわかる。
〈空条承太郎、本日中にきさまを殺す。
わたしの幽波紋で!花京院典明〉
『ふふっ』
「…承太郎〜」
明らかにまだ肉の芽が抜かれていない状態の花京院の文面につい笑ってしまった。
すると台所からホリィさんに貰ったであろう菓子折々を両手一杯に持っている花京院が、恨めしそうな声を出して承太郎の手元に視線を注ぐ。
「人の黒歴史を掘り返さないでくれるかい?」
「返しそびれててな、おめーのだろ」
「いいよそれはもう返さなくて!」
花京院がお菓子を机の上に置いて座りながら抗議する。
罰が悪そうにしている彼のフォローとして個包装されているドーナツを差し出した。
『けどあの時の花京院も花京院で新鮮でいいと思うよ。
一人称が私だったり承太郎のことJOJOって呼んでたり』
「だからあの時は…もう」
そう考えると、今目の前でミニドーナツを頬張る花京院は別人みたいだ。
実際別人にされるような洗脳に近しいことはされていたが。
「オラ、煎餅」
『ありがと』
承太郎から投げ渡された醤油せんべいを一口かじってからお茶を飲む。
そういえば、承太郎の家には何回も来てるけど花京院の家はお邪魔してないな。
出来ればいつか行ってみたい。ご両親に挨拶…とか兄妹がいれば話してみたいし。
それよりまずは博物館に行くのが先か、前回の二の舞にならないようやることリストでも作ろう。
というか家族関連で言うと私も二人を家に招待したことがないのか。
けどあの両親だからいてもいなくても反応はあまり変わらなさそう。
再びお茶をすすって短く息を吐く。
親友二人と同じ空間で、おまけに相手の家で寛ぐなんて昔の私がきいたら卒倒しそうだ。
「承太郎、口元についてるよ」
「ン」
「そっちじゃあなくてもう少し右…」
十七年間夢にまで見た楽しい学生生活。
それを形容する単語としてよく“青春”が使われる。
けれどもし私の青春が承太郎と花京院とこうして笑い合うことだとしたら、今だけじゃあなくて大学生や大人になったとしても続いていけたらいい。
遅いスタートでも終わりが見えなくてもそれは紛うことなき青春なのだから。
『花京院も、ついてる』
「え⁉」
承太郎に汚れの位置を知らせている花京院に、そう優しい声音で伝えた。
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酸性雨の1つ(プロフ) - 蛸山葵さん» いえいえ、、貴方こそが神なのです。崇め讃えます。 (2月3日 21時) (レス) id: f35602649d (このIDを非表示/違反報告)
蛸山葵(プロフ) - 酸性雨の1つさん» まさか私の知らぬ間に降臨していたとは……。神の名に恥じぬよう頑張りたいと思います! (2月3日 21時) (レス) id: eddcdf4797 (このIDを非表示/違反報告)
酸性雨の1つ(プロフ) - 、、、神が此処にいますね存在してますね (2月3日 11時) (レス) @page50 id: f35602649d (このIDを非表示/違反報告)
蛸山葵(プロフ) - 憂さん» 「続きが見たい」と言ってくれてとても嬉しいです!申し訳ありませんが変にダラダラと続けるよりは今区切っておきたいと思いまして…。まだ拙い文ですが読んでくださりありがとうございました。 (11月7日 21時) (レス) id: eddcdf4797 (このIDを非表示/違反報告)
憂(プロフ) - お、、終わっちゃうんですか!! できることなら続きが見たいです 間違いであってくれぇ〜 (11月7日 0時) (レス) @page50 id: fbaa8ffb84 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蛸山葵 | 作成日時:2023年8月28日 23時