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「承太郎、次からは事前にああいう資料を渡してくれるかな。
あの状況なかなかにキツかったんだが」


「すまねえな、つい」


『もしかして遊ばれてた?』



心なしか微笑んでいるように見える承太郎の横顔に不満そうな表情で返す。
承太郎のおかげで十分もせずに脱出できたけどとんだ辱めを受けたよ、全く。



「あの教師が苦手になりそうだよ」


「あいつは常にあんな態度だぞ」


「気が引けるな」



玄関にある下駄箱から靴を取り出していると、久しぶりの動作に過去の学校の風景がフラッシュバックした。いい思い出はどうやら見つかりそうにない。

自分の性格のせいもあるけれど今までの学校生活の記憶が私を臆病にさせる。
クラスに本当の意味でなじめるようになるのか、楽しいと思えるようになるのか。


ところが耳を触る花京院と承太郎の声だけで、そんなふつふつと沸き起こる不安はどこかへ行ってしまいそうだ。

ただの期待なのかもしれないが、私の学生生活を明るいものに変えてくれそうな希望をこの二人に見出していた。やりたいことだって買い食いにゲームにおかず交換に沢山ある。



「A好きな教師とかはいるのかい」


『いや特に、強いて言うなら用務員かな。
いっつも優しい顔で校内掃除してるから癒されるよ』



なんか、すごい学生っぽい。花京院の質問に一人そう感じた。
これからは同じ学校に通うから、もっとこういうことが体験できるってことだよね。


承太郎と花京院が、スタンドの理解者がいる学校。

以前の私なら喉から手が出るほど欲しかった環境だろう。
現に今その単語がとても魅力的に映る。


しかし、一筋縄ではいかないという事はわかっているつもりだ。

クリスマスケーキにのっている砂糖菓子だって毎年必死になって入手するが、お世辞にも美味しいとは言い難い。


ハードルを上げて勝手に落ち込むのは常に自分…昔ならば。



『花京院、承太郎』



玄関を通過して三、四歩先を歩いていた二人に声をかけた。
背後の夕日が振りむく姿を照らし出し、眩しさに若干目を細める。

名前を呼ばれた意味が分からずに頭に?を浮かべている花京院と承太郎に向かって、私は改めて告げた。



『これからよろしく』


「「ああ」」



ワンテンポ遅れたその返事はとても頼もしく聞こえる。

この二人なら何があっても後悔しないと言えるのはなんでなんだろう。
そんな疑問を残し、私は一か月と二十日の信頼にこれからの学校生活を委ねることにした。

華麗なる登校→←〃



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酸性雨の1つ(プロフ) - 蛸山葵さん» いえいえ、、貴方こそが神なのです。崇め讃えます。 (2月3日 21時) (レス) id: f35602649d (このIDを非表示/違反報告)
蛸山葵(プロフ) - 酸性雨の1つさん» まさか私の知らぬ間に降臨していたとは……。神の名に恥じぬよう頑張りたいと思います! (2月3日 21時) (レス) id: eddcdf4797 (このIDを非表示/違反報告)
酸性雨の1つ(プロフ) - 、、、神が此処にいますね存在してますね (2月3日 11時) (レス) @page50 id: f35602649d (このIDを非表示/違反報告)
蛸山葵(プロフ) - 憂さん» 「続きが見たい」と言ってくれてとても嬉しいです!申し訳ありませんが変にダラダラと続けるよりは今区切っておきたいと思いまして…。まだ拙い文ですが読んでくださりありがとうございました。 (11月7日 21時) (レス) id: eddcdf4797 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - お、、終わっちゃうんですか!! できることなら続きが見たいです 間違いであってくれぇ〜 (11月7日 0時) (レス) @page50 id: fbaa8ffb84 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蛸山葵 | 作成日時:2023年8月28日 23時

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