家族の形 ページ37
生まれてはじめて、生まれてはじめてだ。
仮初めの友好関係でも表だけの仮面家族のような関係でもない。
心が通いあった本物の友達…いや、“親友”ができた。
心なしか、ではないな。ハッキリと帰宅の足取りが軽い。
冗談抜きでニヤケすぎて口角がどうにかなりそうだ。
いっそスキップもしてやろうかなんて気持ちまで出てくる。
わかりやすく浮かれている私だが自宅前で一回止まった。
心を落ち着かせるために扉と向かい合って自分の頬を叩く。
こんな浮かれた姿を親に見せるわけにはいかない。
上がりっぱなしだった口角を戻して家の扉を開ける。
『ただいま』
「ん、おかえりー」
ゆっくりとドアノブを捻って玄関から顔を出した。
気だるそうな返事をする母親はいつもとなんらかわりないみたいだ。
視線を少し私にやってからいつものようにソファに身体を預けてテレビを見る。
かなり寛いでいる様子なので家事は大方終わったんだろう。
「あ、そうだ。お父さん今寝てるから静かにね」
『うん』
思い出したようにつけたして言うがそれはいつものこと。
別に伝える必要なんてないのにと感じつつ頷きを返した。
私の母親は専業主婦、面倒くさがりという点を除けば普通の人。
しかしその面倒くさがりがたまにラインを越えていて、どんな行事があったとしてもお弁当なんて作ってもらったことはない。
最低限のことはするがそれ以上のことは無駄だと判断ししないタイプの人間だ。
『夕食は?』
「青椒肉絲」
一方父親の方は勤勉で働き者、医者という職業についている。
しかし父の場合職業柄なのか学生の私ととことん生活リズムがあわない。
私が寝ているときに出勤、私が家に帰った頃に睡眠。
休日も病院からの呼び出しがあったりで会えずじまいだ。
何を考えているかわからない母親に顔もすぐ思い出せない父親、だから少しだけ家にはいづらい。
昔母にスタンドを打ち明けたときの反応が軽くトラウマなのかも。
普通の人には見えない何かがいる、言ってることは厨二病だから当たり前の反応なのだろうけども。
早く自室でダイオウグソクムシのぬいぐるみでも抱き締めよう。
そう考えて階段の一段目に足をかけたとき、母が口を開いた。
「最近やけに嬉しそうだけど、なんか良いことでもあった?」
『……うん』
私を見てくれていたことに驚き目を見開かせる。
今まで口出しはしなかったから無関心だと思っていた。
母も…悪い人では、ないんだよな。
70人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
酸性雨の1つ(プロフ) - 蛸山葵さん» いえいえ、、貴方こそが神なのです。崇め讃えます。 (2月3日 21時) (レス) id: f35602649d (このIDを非表示/違反報告)
蛸山葵(プロフ) - 酸性雨の1つさん» まさか私の知らぬ間に降臨していたとは……。神の名に恥じぬよう頑張りたいと思います! (2月3日 21時) (レス) id: eddcdf4797 (このIDを非表示/違反報告)
酸性雨の1つ(プロフ) - 、、、神が此処にいますね存在してますね (2月3日 11時) (レス) @page50 id: f35602649d (このIDを非表示/違反報告)
蛸山葵(プロフ) - 憂さん» 「続きが見たい」と言ってくれてとても嬉しいです!申し訳ありませんが変にダラダラと続けるよりは今区切っておきたいと思いまして…。まだ拙い文ですが読んでくださりありがとうございました。 (11月7日 21時) (レス) id: eddcdf4797 (このIDを非表示/違反報告)
憂(プロフ) - お、、終わっちゃうんですか!! できることなら続きが見たいです 間違いであってくれぇ〜 (11月7日 0時) (レス) @page50 id: fbaa8ffb84 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:蛸山葵 | 作成日時:2023年8月28日 23時