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「はい三人ね、ちゃんと集まってくれてありがとう」
机を挟んで座っている頬杖をつく数学教師だか音楽教師。
いつもなら無関心で済んでいた真っ赤な西日が不安を煽る。
三人そろって学校を早退したのを誰かが見かけたのか三人共犯なのは決定事項だそうだ。
マトリョーシカのように承太郎、花京院、私の順で座らされて本題に入った。
「まず根本的な質問なんだけどさ、なんで連絡もなく五十日休んだの?
柳本さんは今まで無遅刻無欠席、花京院君も前の学校から貰った資料では別に問題は起こしてなさそうだけど」
教師が承太郎から目線を外してそう言う。落ち着け私、平常心平常心。
旅先で悪いことはしてないから、それどころか吸血鬼を倒したんだからやましいことなんてない。
胸を張っていこう。
『すみません色々急だったので立て込んでて報告できませんでした』
「ふーん、で?それで二か月間なにしてたのよ」
質問に対する答えのはずなのに興味なさそうに一蹴する。
この先生のねっとりした圧をかける聞き方が苦手なんだよな。
隙を見せないように振舞うのはいいが、今までの旅路を素直に白状したら信じてくれない上にふざけてると思われるだろう。やんわりと、ぼわっと表現しよう。
『(社会の)掃除とかですかね…?』
教師からの圧に耐え切れず返答を焦った結果、思いつくのがこれしかなかった。
ほら、スティーリー・ダンとかラバーソウルとか放っておいたらやらかしそうな奴いたでしょ。
「…そっか、花京院君は?どうせ三人一緒にいたんだから答えられるよね」
コイツは駄目だと感じたのか見切りをつけて花京院へ話を振る。
けど五十日で体験した事柄は同じ、答えづらいのに変わりはない。
「……こ」
「こ?」
「校外学習、ですかね…?」
「は?」
そうなるよね。五十日休んですることなんて見つからないんだから。
教師からの視線が痛く花京院と一緒に縮こまる。
待て、まだ私達には承太郎がいる。後は託した!
蜘蛛の糸にしがみつく気持ちでそっと承太郎の方を見ると、彼は茶封筒を机に置いた。
「この中に休学中のことを纏めた資料が入ってる。
詳しくしりてーんなら無駄な時間を過ごすより、これを読んだ方がよっぽど速いと思うぜ」
なるほど、もう手は打ってたってことか。
確かにここに束縛されるより百倍マシだ…けどな。
「『(出来ればもっと早く言ってほしかった)』」
そう思ったのは、きっと私だけじゃあないはず。
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酸性雨の1つ(プロフ) - 蛸山葵さん» いえいえ、、貴方こそが神なのです。崇め讃えます。 (2月3日 21時) (レス) id: f35602649d (このIDを非表示/違反報告)
蛸山葵(プロフ) - 酸性雨の1つさん» まさか私の知らぬ間に降臨していたとは……。神の名に恥じぬよう頑張りたいと思います! (2月3日 21時) (レス) id: eddcdf4797 (このIDを非表示/違反報告)
酸性雨の1つ(プロフ) - 、、、神が此処にいますね存在してますね (2月3日 11時) (レス) @page50 id: f35602649d (このIDを非表示/違反報告)
蛸山葵(プロフ) - 憂さん» 「続きが見たい」と言ってくれてとても嬉しいです!申し訳ありませんが変にダラダラと続けるよりは今区切っておきたいと思いまして…。まだ拙い文ですが読んでくださりありがとうございました。 (11月7日 21時) (レス) id: eddcdf4797 (このIDを非表示/違反報告)
憂(プロフ) - お、、終わっちゃうんですか!! できることなら続きが見たいです 間違いであってくれぇ〜 (11月7日 0時) (レス) @page50 id: fbaa8ffb84 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蛸山葵 | 作成日時:2023年8月28日 23時