血塗れの階段 ページ30
「そろそろ戻ろうか」
『うん』
「ああ」
昼食を食べ終わっても引き続き会話していたが、屋上から見える人気の少なくなった校庭に撤収の準備を始める。
承太郎と一緒にパンの袋を結び、紙パックを潰し。ずっと続けてたら器用になりそう。
花京院はお弁当だから一足先に片付けを終わらせドアノブに手を掛けていた。
追いかけるように立ち上がって、花京院の後ろにつづく。
「というか、ダイオウグソクムシって言うほどカワイイか?」
『承太郎はまだまだ海洋生物の良さをわかってないんだって』
「そりゃお前がテントウムシを好きだと言うようになるくらい無理な話だな」
『…まさか』
海洋生物について承太郎と話すが言い負かされそうな展開に思わず目をそらす。
私達の話し声から振り向いてその様子を見た花京院が、母親のような朗らかな声音で告げる。
「階段降りる時は足元見てないと危ないよ」
『あ!ごめ…』
彼のもっともな注意に急いで視線を動かしたが、それがいけなかった。
花京院の言葉で全身フラグ人間となった私は無事足を踏み外し前のめりになる。
やけにスローモーションに映る風景に、頬を伝う冷や汗と体を襲う浮遊感。
咄嗟に手を伸ばし掴んだのは誰かの手でも服でもなく、花京院の前髪だった。
「え」
『あ』
「は」
やってしまった。
全身氷漬けにされたような気分で、私は花京院を道連れにして階段を転げ落ちた。
『い!』
「いたっ」
頭はぶつけなかったものの着地地点の右腕にダメージが集まる。
というか、今の状況で気にするのはそこじゃあない。
忠告を無視して落下した挙げ句巻き込んでしまった花京院の悲鳴が聞こえた。
『花京院ケガは!』
「いや、特に目立つようなものは…」
「おい、血」
「うぇ」
ドロリと彼の鼻から垂れる血が罪の意識を一層強くさせる。
どんどん赤く染まっていく花京院の掌にティッシュがないかポケットを探るが、どうやら教室に置いてきたようだ。
『私保健室にガーゼ取ってくる!』
「A!ま…」
花京院の突然の出血に焦り、承太郎の制止を振り払い駆け出す。
しかし混乱からか承太郎が「待て」と言いきる前に何もないところで再びスッ転んだ。
「お前は大人しく座ってろ!」
『申し訳ございません!』
二人に対して何も言えなくなったわけだ。
間違ってもスタープラチナ・ザ・ワールドを使えば良かったのではなんて言わないように口を閉じた。
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酸性雨の1つ(プロフ) - 蛸山葵さん» いえいえ、、貴方こそが神なのです。崇め讃えます。 (2月3日 21時) (レス) id: f35602649d (このIDを非表示/違反報告)
蛸山葵(プロフ) - 酸性雨の1つさん» まさか私の知らぬ間に降臨していたとは……。神の名に恥じぬよう頑張りたいと思います! (2月3日 21時) (レス) id: eddcdf4797 (このIDを非表示/違反報告)
酸性雨の1つ(プロフ) - 、、、神が此処にいますね存在してますね (2月3日 11時) (レス) @page50 id: f35602649d (このIDを非表示/違反報告)
蛸山葵(プロフ) - 憂さん» 「続きが見たい」と言ってくれてとても嬉しいです!申し訳ありませんが変にダラダラと続けるよりは今区切っておきたいと思いまして…。まだ拙い文ですが読んでくださりありがとうございました。 (11月7日 21時) (レス) id: eddcdf4797 (このIDを非表示/違反報告)
憂(プロフ) - お、、終わっちゃうんですか!! できることなら続きが見たいです 間違いであってくれぇ〜 (11月7日 0時) (レス) @page50 id: fbaa8ffb84 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蛸山葵 | 作成日時:2023年8月28日 23時