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十人分の愛 ページ16

「好きです!付き合ってください!!」



放課後に目の前で頬を染めながら腰を折って手紙を渡してくる。そう、それは告白の常套句。
相手の手元にある手紙もきっと俗に言うラブレターで愛の言葉がつづられているんだろう。

私が目指している青春で連想されるものの一つである恋。
きっと大人になったときに燃え盛る恋愛を思い出し遠い目で懐かしむに違いない。


愛の炎を燃やすのはとてもいいことだと思うし批判しない、けれど一つ。



『私に言われても…』


「お願い!そこをなんとか!!」



人を巻き込まない範囲でやってもらいたい。

頭の中で勝手にモノローグをつけながら、「空条承太郎様へ」と書かれたラブレターを差し出してくる女生徒に諭すように伝えた。


一週間ぐらい学校に通い彼女たちの気さくさによりで予想以上に打ち解けることができたが、私の立ち位置はすっかり承太郎との取り次ぎ役になっている。

今も承太郎に直接ラブレターを渡せないらしい女生徒に頼みを受けていたところだった。



『本人に直接渡せないなら下駄箱は?
ベタだけど確実に目にはとまるよね』


「……」



本人に会わない別のラブレターの渡し方を提案するが、彼女は無言で頭を横に振る。
何か違うらしい。緊張してもいいから自分の手で渡した方がいいと思うんだけどな。



「下駄箱は常に満杯で入れる隙がなくて…。
それに柳本さん経由だと読まずに捨てられる心配もないかなーって」


『え?捨てる?』


「そう、やっぱそこが一番の壁よねー」



明るい声音で語られた黒ヤギさんぐらいしかしないような行為に耳を疑った。
ラブレターを受け取り中身を拝見するがぎっしりと欄が文字で埋められている。

この内容量が塩辛の塩分濃度くらい濃いラブレターを読まずに捨ててる?
うーん、毎日大量にラブレターを貰っていると仮定したとしてもやりすぎ…。


承太郎って優しいけど優しくないからな。



『わかった、渡しておくけど今回だけだよ?』


「ありがとう柳本さん!」



情けにも似た気持ちで一度きりの条件を設けて願いを飲み込んだ。



『じゃあこれで「あ、私もお願い!」


『え』



下駄箱で待っているはずの承太郎に渡そうと一歩進んだら、追加で数枚ラブレターを渡された。


きっと承太郎はこの十何倍ものラブレターを葬っているんだろう。
これ、顔面に投げつけてやろうかな。「女心を少しはわかってもらえないか」

叶わなさそうな願いに想いを馳せて重くため息を吐いた。

使いどころ→←おつかれさまでした



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酸性雨の1つ(プロフ) - 蛸山葵さん» いえいえ、、貴方こそが神なのです。崇め讃えます。 (2月3日 21時) (レス) id: f35602649d (このIDを非表示/違反報告)
蛸山葵(プロフ) - 酸性雨の1つさん» まさか私の知らぬ間に降臨していたとは……。神の名に恥じぬよう頑張りたいと思います! (2月3日 21時) (レス) id: eddcdf4797 (このIDを非表示/違反報告)
酸性雨の1つ(プロフ) - 、、、神が此処にいますね存在してますね (2月3日 11時) (レス) @page50 id: f35602649d (このIDを非表示/違反報告)
蛸山葵(プロフ) - 憂さん» 「続きが見たい」と言ってくれてとても嬉しいです!申し訳ありませんが変にダラダラと続けるよりは今区切っておきたいと思いまして…。まだ拙い文ですが読んでくださりありがとうございました。 (11月7日 21時) (レス) id: eddcdf4797 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - お、、終わっちゃうんですか!! できることなら続きが見たいです 間違いであってくれぇ〜 (11月7日 0時) (レス) @page50 id: fbaa8ffb84 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蛸山葵 | 作成日時:2023年8月28日 23時

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