8話 ページ9
sideA
甘い甘い夢を見て、起きれば現実と空虚感。
A『なにあれ……』
籠いっぱいの飴玉は浅霧さまだとして…
花と果物、日持ちする菓子類がこんもり…
｢お前の為にだよ。｣
振り返ると
A『あら。随分早い帰国ですね。』
泣きそうな会長様。
久磨｢…誰のせいだよ……｣
A『さあ。急かした覚えはございません。』
涙の跡が分かるくらい泣いていたのでしょう。
side久磨
世界にマブダチはいっぱい居る。
けど、Aはただの幼馴染み。
そう自分に言い聞かせていた。
｢いつも凛太郎に任せてごめん。｣
と笑うAの兄。
過去の記憶。
失踪する前の記憶。
｢だから、今度はAは連れていくよ。社会勉強にもなるしね。｣
…嫌だ！
Aは連れていかないで!!
…お願い!!Aだけは俺から奪っていかないで!!
現地の友人が心配して声をかけた。
久磨｢あ〜！ごめんね〜!!｣
明るくいつものテンションに持っていくのが辛い。
久磨｢…お願い…連れていかないで……｣
昏睡状態になるのは稀にある。
でも、いつか本当に目覚めないんじゃないかと思うと…
久磨｢やっ！｣
浅霧｢あらら〜。白華サーン。会長来たんだけど。｣
白華｢…おかえりなさいませ。｣
病室に入ると幸せそうに眠っている。
手は常にあの人と繋がったまま。
白い壁と白いベッドと無機質な音が響く。
一瞬、ガクッと血圧が落ちた。
久磨｢ヤダ…！連れていかないで……！｣
Aを腕を回して抱きしめる。
【いつも凛太郎に任せてごめん。】
任せっきりで良い。
俺から奪っていかないで。
白華｢会長…そろそろ時間が…｣
久磨｢おっけー！…もう少ししたら行くから行ってて良いよーん✩｣
白華｢会長にお伝えするべきか悩みましたが…｣
な、なに？
白華｢神咲さんの独り言ですから気にしなくて良いと思いますが…夢ライブ終わりに
【逆だったら良かったのに…】
との事です。｣
逆だったらって何？
まさか、あの人じゃなくてAが居なくなれば良いって事？
久磨｢教えてくれてありがとねん！｣
2人が退室した。
久磨｢今時、悲劇はウケ良くないよ。｣
返事は無機質な機械音。
久磨｢にーさんの手、温かい？俺の方が温かいでしょ？｣
冷たいAの手を握る。
久磨｢こっちおいで。｣
スっと表情が消えた。
やった…もうすぐ帰ってくる。
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作者名：ペテン師 | 作成日時：2019年3月11日 1時
