捨てないで。 ページ16
ヒタ、ヒタ、ヒタ…
冷たい足音が響く暗闇。
何度もこんな所に来た気がする。
何処に続くかも分からない暗闇の中、1人歩いていた。
『何処だろ…』
不意に髪に手をやる。
『無いっ！！！』
にぃにから付けて貰った髪飾りが無い。
無駄だとはわかっていても只管辺りを探す。
手探りで探していた。
その瞬間、目の前が明るくなる。
目をやると大好きな背中が見えた。
『っ！にぃにっ！！！』
叫んだが兄は返事をしない。
その代わりに振り返った兄の顔は私を軽蔑する様な目でこう言った。
「自分、お前みたいな失敗作要らないんだ。人があげた物すら失くす奴なんか妹じゃないっす。邪魔だから消えて。」
『そ、んな…』
どんどん先へ進む兄を必死に追いかける。
『待って！置いていかないでよ！！！』
「邪魔だって言ってるでしょ！！！」
『__ひっ』
「お前は妹じゃない」
『にぃにまでっ…』
捨てないで…待ってよ…
僕、此処から抜け出せないよ…
にぃにがいないと…
もう、駄目なんだ…
誰も信じられなくなる
怖いんだ…
だから…お願いだから…
もう1人にしないでよ…
なんでもできる様になるから
迷惑もかけない様にするよ
ちゃんとイイ子にもなる
だから…だから…
お願いだから…
僕を捨てないで。
1人にしないで。
息が苦しい。
呼吸が覚束無い。
足が竦んで歩けなくなる。
にぃにはもう見えなくなって。
もう僕の周りには誰も居なくなっちゃった。
涙が頬を伝う。
その場にしゃがみ込んだ。
ふと頭にいつかの記憶が過った。
全部、全部、全部。
苦しさの中に垣間見えた本当の自分。
泣いてる。
必死に足掻いて。
手を伸ばす。
無理ってわかってるのに。
じぶんを偽るには
もう十分だ。
消えてく様に。
そっと。
そっと。
目を閉じる。
それから。
ゆっくり消えよう。
ダレモイナイセカイヘ。
僕だけの絵本を開く。
ブリキの人形劇を観て。
悲劇に涙を流して。
ドラッグに埋もれて。
デッサン人形と手を繋いで。
血の雨に降られて。
左側に劔を刺し込んで。
裏側から落っこちて。
表側に別れを告げるんだ。
「さようなら。」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 32人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
許（元はく） - めちゃくちゃ感動しました。今涙流してます（笑）途中ヤンデレみたいで怖いなって思ってたんですけど、ストーリー性とかもあってとても面白かったです。お疲れ様でした。 (2020年7月7日 0時) (
レス) id: 4d0b20ffc1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：音夜 | 作成日時：2020年5月4日 0時
